賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(28)国後島(北海道)

 (『ジパングツーリング』2001年11月号 所収)

 

 根室から知床半島の玄関口、標津へ。

 標津に着くと、まずは浜に立ち、根室海峡の向こうの国後島を眺める。面積1500平方キロの日本第2の大島だ。千島列島の中では第3位。標津からは国後島の南端あたりが見える。

 標津温泉の公衆温泉浴場「くすのき」(入浴料360円)の湯に入り、町中の食堂「亀代」で「ホタテ刺し身定食」(1250円)を食べ、知床半島に入っていく。

 滝の沢林道を走り、知床半島第一の秘湯、薫別温泉へ。

 岩棚の露天風呂の湯は熱く、そなえつけのバケツで何十杯もの渓流の水をくみ入れ、やっと湯につかることができた。

 薫別で国道335号に出、羅臼に向かって走る。右手には国後島がはっきりと見える。国後島を眺めながら走る気分はたまらない。

 このあたりから見えているのが国後島南西部の泊湾。島内最良の湾で、かつては根室との間を定期船が往復していた。

 羅臼からさらに根室海峡沿いに北へ。国後島がよりはっきりと見える。海中露天風呂のセセキ温泉では、水平線上の国後島を眺めながら湯につかった。このあたりから眺める国後島はいくつもの大島が鎖状に連なっているかのように見える。

 セセキの先、相泊の海岸には、相泊温泉の露天風呂。小屋掛けをしてあって男女別の湯に分かれている。

 相泊の海岸から国後島を眺めると、島の最高峰、爺爺岳(1822m)が霞んで見える。知床半島の山々にはまだかなりの残雪が見られたが、爺爺岳に雪はなかった。

 道の行き止まり地点にある食堂「熊の穴」では「トド肉定食」(1200円)を食べた。海獣トドの焼肉で、北海道ならではのもの。クジラに似たトドの肉の味だ。

 相泊から羅臼に戻る。夕日に照らされた国後島が一段とよく見えるようになる。

 羅臼では「羅臼国後展望台」に立ち、夕暮れの国後島を眺め、羅臼温泉の「らうす第一ホテル」に泊まった。

 翌朝は朝風呂に入ったあと、5時、出発。今日も抜けるような青空。3日つづきの快晴だ。羅臼から知床半島横断の国道334号で知床峠に向かう。峠の登り口の無料露天風呂「熊の湯」に入る。人気の湯だけあって、早朝から何人もの人たちが入っている。

 湯から上がると知床峠を登っていく。空の色がますます青くなり、スーッと吸い込まれそうになる。快適なコーナリングを繰り返し、標高738メートルの知床峠に到達。知床半島の最高峰、羅臼岳が目の前にそびえたっている。

 ここでは車でやってきた若い女性に、

「写真をとってくださ~い!」

 と頼まれてシャッターを押した。

「私、これから、あの羅臼岳に登るんです。山頂からは択捉島が見えるんですよ」というではないか。

 ノーブラで薄地のTシャツ1枚の、胸をプルンプルンとさせてる彼女の「択捉島が見えるんですよ」の一言に心を動かされ、ぼくも即座に羅臼岳に登ることにした。

 知床峠を越え、オホーツク海側の宇登呂に着くと、観光船の案内所でトーストとコーヒーの朝食を食べ、岩尾別尾の無料混浴露天風呂→知床五湖→カムイワッカ湯の滝→知床大橋と速攻でまわり、宇登呂に戻った。

 宇登呂の「セイコーマート」でクリームパン、シュークリーム、缶紅茶の軽食を食べ、おにぎり4個とチョコレート、ミネラルウォーターを買い、岩尾別温泉へ。そこから羅臼岳を登っていく。

 岩尾別温泉から4時間15分、標高1660メートルの羅臼岳山頂に着いた。

 山頂からの眺めは絶景。

 知床の連山を一望し、長々と横たわる国後島のはるか向こうには、まるで空に浮かんでいるかかのような見え方で、択捉島が見えた。感動のシーン。

 羅臼岳を下ると、岩尾別温泉の「地の涯ホテル」に泊まった。