秘湯めぐりの峠越え(49)天城峠編(静岡)
(熱海→熱海195キロ・取材日1996年3月28日)
露天風呂で聞く「春の海」
「天城峠」の出発点は熱海。R135で海沿いに南下していく。
相棒はスズキDJEBEL250XCだ。
温泉の宝庫の伊豆半島。
伊東を通り、東伊豆町に入ったところにある大川温泉を第1湯目にし、海っぷちにある露天風呂の「磯の湯」に入った。
「磯の湯」には先客がいた。
4人の年配の人たちで、同好会でもつくっているのか、湯につかりながら尺八を吹いていた。春うららかな陽気になかで、4人は「春の海」を合奏する。波の音が絶好のBGMになっている。まさに温泉ライブといったところで、ぼくも湯につかいながら聞きほれてしまった。
第2湯目は、熱川温泉。
湯量の豊富な温泉で、温泉街のあちこちから湯けむりが立ちのぼっている。つい最近まで50円で入れる共同浴場が海岸近くにあったのだが、それも、今はない。そのかわりに、やはり海っぷちにある露天風呂「高磯の湯」に入った。大川温泉の「磯の湯」よりもはるかに大きな露天風呂で、気分よく入れた。
断崖上の露天風呂
熱川温泉に隣りあった片瀬温泉を過ぎ、白田川を渡った白田温泉でR135を右折。白田林道に向かう。
国道から6キロほどで、ダートに入る。天城連峰の主峰群に向かって、グングンと登っていく。ところどころラフな路面で、岩盤が露出しているような個所もある。
林道入口から10キロほどの地点の分岐を左へ、今度は上佐ヶ野林道に入っていく。2本の林道を走りつなぎ、ダート20キロを走り、湯ヶ野温泉へと下っていった。
湯ヶ野温泉からは旧道で天城峠を越えた。
次に新道でもう1度、天城峠を越え、湯ヶ野温泉に戻った。
湯ヶ野温泉では町営湯の露天風呂に入ったが、林道を走り、峠を越えたあとで入る温泉はたまらない。ホッとするような、なんともいえない安堵感を感じながら湯につかった。
湯ヶ野温泉からは、R135へ。
その途中では、峰温泉の「踊り子温泉会館」の湯に入る。大浴場には、打たせ湯や泡湯、サウナもある。大露天風呂もある。この「踊り子温泉会館」の入口には、日本一の大ソテツ。樹齢1000年という古木だ。
R135に出ると、出発点の熱海へ。まだまだ、温泉めぐりはつづく。
まずは、今井浜温泉。町営の露天風呂は、がらりと装いを変え、「サンシップ今井浜」という町営湯に生まれ変わっていた。
総ガラス張りの大浴場では、湯につかりながら太平洋を眺める。
断崖上の露天風呂は、以前のままだった。これが、すごい!
目の前には、太平洋の大海原。水平線を眺め、断崖にブチ当たって砕ける散る波しぶきを眺めながら湯につかる気分は、
「おー、これぞ、温泉!」
と、叫びたくなってくる。
今井浜温泉の露天風呂におおいに満足したあと稲取温泉へ。
ここでは、温泉銭湯の「都湯」に入った。番台で入浴料を払い、熱めの湯と温めの湯の、2つに仕切られた湯船に交互につかる。ちょっとした地元の人たちの社交場といったところで、湯につかりながら聞くみなさんの世間話しは楽しいものだ。
稲取温泉から北川温泉へ。
ここでは混浴の露天風呂「黒根岩風呂」に入る。混浴とはいっても、入浴客は男だけ。すでに日は暮れ、波の音を聞きながら湯につかった。
「黒根岩風呂」は、混浴の露天風呂だが、午後7時から9時までは女性専用タイムになっている。
北川温泉からは夜道を走る。伊東温泉では駅前の温泉銭湯に入り、最後の熱海温泉でも駅前の温泉銭湯に入った。
■一口メモ■
今回入った8湯のほかにも、東伊豆には、まだ、いくつもの温泉がある。北からいうと、伊豆山温泉、網代温泉、宇佐美温泉、伊豆高原温泉、赤沢温泉、片瀬温泉、白田温泉、谷津温泉、河津浜温泉など。東伊豆の温泉めぐりでひとつ難しいのは、入浴だけをさせてくれる温泉宿があまりないということだ。
■天城峠編で立ち寄った温泉一覧■
1、大川温泉 磯の湯 500円 男女別の露天風呂。11時~18時
2、熱川温泉 高磯の湯 500円 男女別の露天風呂。湯船の広さが魅力の湯
3、湯ヶ野温泉 町営湯 500円 国民宿舎「かわづ」の湯。午後4時まで
4、峰温泉 温泉会館 1000円 「踊り子温泉会館」。大広間の休憩所
5、今井浜温泉 町営湯 1000円 「サンシップ今井浜」。露天風呂が最高!
6、稲取温泉 都湯 320円 地元の人たちに密着した温泉銭湯
7、北川温泉 露天風呂 600円 混浴の「黒根岩風呂」。16時~23時
8、伊東温泉 湯の花 150円 駅前の温泉銭湯。パチンコ屋の地階
9、熱海温泉 駅前温泉 350円 駅前の温泉銭湯。途中下車の旅行者も来る