賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(25)佐渡島(新潟)その1

 (『ジパングツーリング』2001年10月号 所収)

 

 新潟到着は19時30分。新潟駅前から信濃川河口の佐渡汽船のターミナルビルへ。

 最終のフェリーまではまだ時間があるので、ターミナルビル8階の展望レストラン「シェルブール」で夕食にした。

 「島旅」ではずっと魚を食べつづけてきたので、無性に肉が食べたくなり、ステーキとハンバーグの「ミックスグリル」(1200円)を注文し、新潟の夜景を見ながら食べた。何か、ものすごく久しぶりに肉を食べた気分。裏を返せば、それほど毎日、魚を食べていたことになる。

 21時40分発の「おけさ丸」(1万2419トン)に乗る。佐渡島は日本では択捉島、国後島、沖縄本島に次ぐ第4位の大島。1万トンを超えるフェーの大きさは、佐渡島の大きさを物語っている。

 24時に佐渡島・両津港に到着。すぐに両津に近い椎崎温泉の「ホテル桂」に行く。新潟港から電話した宿だが、守衛さんが部屋まで案内してくれた。すぐに大浴場の湯につかり、湯から上がると、部屋でキューッと冷えたビールを飲み干した。

 翌朝、夜が明けると、4階の部屋の窓から加茂湖を見下ろした。湖面には無数の養殖用筏。ここではカキを養殖している。

 さっそく朝風呂に入る。目をさましてすぐに入る温泉ほど気持ちのいいものはない。大浴場の湯をぼく一人で独占して入っていると、タヌキがやってきた。浴場のガラス越しにタヌキと目が合う。タヌキは好奇心いっぱいという顔をしていた。

 8時に出発。そのころから雨がかなり激しく降ってくる。雨具を着て走り出すのはいやなものだ。雨に打たれながら両津港まで行った。

 ここを出発点にして、8の字を描くように佐渡島を一周するのだ。

 まずは佐渡島の北半分を反時計回りでまわる。

 両津から北へ、内海府の海沿いを行く。雨は激しく降っているが、海は穏やかで波ひとつない。対岸の越後の山々はまったく見えない。

 佐渡島北端の弾崎へ。岬には白い灯台。岬の高台に立つと、左手には二ツ亀が見える。その名のとおり、2匹の亀のように見える大岩だ。その二ツ亀に行き、次に大野亀へ。大野亀は「日本のエアーズロック」といってもいいような一枚岩の巨岩で、てっぺんまで歩いていける。上からの眺めは絶景だ。

 大野亀からは外海府の海に沿って南下していく。幸い、天気は回復し、雨は上がった。相川を通り、佐和田からは国道350号で両津に戻った。

 この国道350号はおもしろい国道で、本土側はわずかな距離でしかない。新潟から両津までは国道フェリー、両津から小木までが佐渡島内で、小木から直江津までがやはり国道フェリーになっている。

「佐渡島一周」の前半戦、終了。ここまで115キロ。やはり佐渡島は大きな島だった。今までまわってきた島とはスケールが違う。

 午後は佐渡島の南半分を時計回りでまわる。途中、津神島と風島に立ち寄った。ともに渡れる小島だが、津神島には津神神社が、風島には弁天がまつられている。

 寺泊へのフェリーが出る赤泊を通り、羽茂町に入ったところで、佐渡の一の宮、渡津神社に寄り道する。渡津神社の赤い大鳥居には、誇らしげに「一宮」の額が掲げられている。豪壮な造りの社殿はさすがに佐渡の一の宮を思わせるものだ。佐渡は淡路や対馬などとともに、日本に5つある「島国」のひとつなのである。

 渡津神社に隣り合った植物園を歩き、羽茂温泉「クアテルメ佐渡」(入浴料500円)の湯に入る。やわらかなタッチの湯で、肌がスベスベになる。

 こうして渡津神社から海岸沿いに走る「佐渡一周道路」に戻り、小木町に入った。小木港では、ちょうど佐渡汽船の大型フェリー「こがね丸」(9504トン)が直江津に向けて出港するところだった。

 小木から宿根木へ。

 ここにある「小木民俗博物館」(入館料500円)は一見の価値がある。復原された実物大の千石船「白山丸」が展示されているからだ。全長23メートル、最大幅7メートルの千石船は超ド迫力。江戸時代の日本の造船技術の高さをまのあたりにする。

 佐渡島突端の深浦からは迂回ルートで沢崎鼻へ。そこには白い灯台が立っている。西日を浴びた沢崎鼻の灯台は、なんともいえずにきれいだった。

 ここを最後に両津に戻る。後半戦は139キロ。合計254キロの「佐渡島一周」。両津に近い住吉温泉「みなみ旅館」に泊まった。