賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(23)飛島(山形)

 (『ジパングツーリング』2001年10月号 所収)

 

 国道7号沿いの宮海温泉「ゆうゆう」で迎えた夜明けの風景は、すばらしいものだった。 朝日が鳥海山の右手に昇る。目の前を流れる日向川がキラキラ光っている。この川は鳥海山から流れ出ている。国道7号が北に延び、左手には日本海が広がっている。空には一片の雲もない。

 朝風呂に入り、朝食を食べ、出発。

 酒田の中心街に入っていく。今でも庄内米の倉庫として使われている山居の倉庫群を見、最上川河口の日和山公園へ。ハマナスの花がきれいに咲いている。公園内の池には、かつての日本海航路を行き来した北前船の千石船が帆を張って浮かんでいる。実物の2分の1の模型。そして飛島航路の乗り場に行く。

 酒田から飛島の勝浦港までは、人が2040円、バイクは570円。この季節、平日は1日1便。9時30分発の「ニューとびしま」に乗った。300人乗りの双胴船(223トン)。酒田港から日本海に出ていく。右手には鳥海山が大きく見えている。

 11時、飛島南端の勝浦港に到着。

 スズキSMX50を岸壁に下ろし、さっそく島を走り出す。小さな島に50㏄バイクはぴったりだ。海沿いの道を行く。対岸の鳥海山の残雪がはっきりと見える。飛島には勝浦、中村、法木と3つの漁港がある。ここは漁業の島だ。

 勝浦から法木まで4キロ。

 法木から飛島北端の八幡崎へ。展望台に立ち、うっそうとした樹木で覆われた岬を眺める。そこから遊歩道で岬の突端にある八幡神社まで行った。

 飛島北端のあとは、南端の館岩に登り、勝浦港に戻った。

 飛島・勝浦港近くの「西村食堂」で昼食。

 日替定食(800円)を食べる。煮魚のメバルがなかなかの味。さすがに島だ。それに身欠きニシン風ホッケの煮つけがついた。店のおばちゃんには「今度は泊まりでいらっしゃい」といわれた。そうすれば、夏の間だと、「体験イカ釣り」(4時~6時)ができるという。

 13時30分発の「ニュー飛島」に乗って酒田へ。

 酒田では国道7号近くのバイクショップ「エスプラッツ」で2ストオイルを入れてもらう。店のご主人、本間正人さんとのうれしい再会。2年前の「日本一周」のときには、本間さんにはずいぶんとお世話になった。

 そんな本間さんに別れを告げ、酒田から海沿いの道を南下。由良温泉では国民宿舎「由良荘」(入浴料250円)の湯に入った。そして朱塗りの橋で白山島に渡った。白山神社をまつる小島だ。

 由良から国道7号を南下。東北最後の地、鼠ヶ関に到着。国道のすぐわきには「念珠関跡」の碑。ここには慶長年間から明治5年まで関所があった。それ以前の「奥羽三関」の鼠ヶ関はここより南に1キロ、ちょうど今の山形と新潟の県境あたりにあったという。

 鼠ヶ関では地つづきになっている弁天島を歩いて一周。500メートルほどの距離。弁天堂をまつる島突端の岩場には、白い灯台が立っている。

 山形県から新潟県に入る。

 海沿いの道を走り、岩船港前の民宿「岩船荘」に泊まった。