賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの林道紀行(15)中部編(その6)

 (『バックオフ』2004年12月号 所収)

「東京→富山」の林道群一気走破!

 今回は「東京→富山」の第2弾目。山梨→静岡→愛知→岐阜→富山というコースで149・8キロのダートを走ったが、山梨・静岡の南アルプスの林道群と岐阜の中腹林道、岐阜・富山の飛騨高地の林道群がメインになっている。

(林道)

1、五開茂倉林道

 国道52号の十谷入口の信号から入った。角には食堂。ここで腹ごしらえしてから林道に向かっていった。途中には鰍沢温泉の「かじかの湯」。林道入口には十谷温泉の何軒かの旅館がある。

 ダートに入ると2・7キロ地点で分岐。そこから右に行く林道は行き止まり。五開茂倉林道は舗装化が進み、その地点から十谷峠までは舗装。早川町側には3・2キロのダートが残り、茂倉の集落へと下っていく。なお五開は鰍沢町側の地域名になる。今回は峠近くで通行止め。そこから引き返した。ダート往復5・4キロ。

2、剣抜大洞林道

 国道52号から県道809号というルートで林道に向かった。十枚荘温泉が目印。十枚荘温泉を過ぎると道幅が狭くなり、二又の分岐に出るが、そこを右へ。集落を過ぎたあたりでダートに入っていく。

 峠越えの林道だが、北側にはかなり路面の荒れたラフな区間もある。峠に向かっての登りも急勾配。ダートに入って10・7キロで峠に到達。峠からの展望はあまりよくない。峠を境にして南側は整備されていて走りやすい。ダート17・8キロ。その間には舗装区間あり。舗装路に出たあたりに奥山温泉の露天風呂がある。

3、白羽山林道

 中川根町の国道362号から入って行く。入口には「川根大仏」と「ウッドハウスおろくぼ」の看板。そこにはガソリンスタンドもある。南赤石林道の舗装区間を登っていくと宿泊施設の「ウッドハウスおろくぼ」に着くが、そこから白羽山(771m)の山頂展望台に向かっていくダートが白羽山林道。

 ダート1・1キロと短いが、適度に荒れた急坂のダートはおもしろく走れる。南赤石蕎麦粒林道のちょうどいい肩慣らしになった。白羽山の展望台からの眺めはすばらしい。大井川の谷間を一望。この一帯は銘茶の産地。

4、南赤石蕎麦粒林道

 白羽山林道との分岐からさらに登った地点で南赤石林道のダート区間がはじまる。大札林道との分岐を過ぎ、5・5キロ地点で大札山の登山口。ここにはトイレがあり、テーブルもあって絶好の休憩ポイント。眺めもいい。

 南赤石林道はここまでで、この地点から先は蕎麦粒林道になる。さらに登るにつれて路面は荒れ、工事区間が連続するようになる。眺望は抜群。絶景林道といっていい。蕎麦粒山の山頂近くを通り、5・1キロ地点で標高1404mの山犬段に到着。ここまでのダートは10・6キロ、往復で21・2kmになる。

5、扇山林道など

 静岡県引佐町の国道257号井伊谷交差点から奥山高原へ。まずは「奥山半僧坊大権現」で知られる方広寺を参拝。門前の店で乾燥納豆の「浜納豆」を味わった。

 陣座峠林道、扇山林道の2本の林道はここから入っていった。陣座峠林道はレジャー施設の「奥山高原」前を通って入っていく。県道303号の静岡・愛知県境の陣座峠まで1・9キロのダート。これを往復した。次に扇山林道。富幕山(563m)の山頂直下を通り、県道308号の静岡・愛知県境の瓶割峠まで7・1キロのダートコース。

6、雁峰林道

 愛知県新城市の国道301号から入った。舗装化が進み、国道から11・8キロ地点でダート。山並みの中腹を縫う林道なので眺めはよくない。所々で樹林の間から豊川流域の町並みや水田地帯を見下ろす。この谷間は信州の諏訪湖から伊那山地三河湾、さらには紀伊半島、四国、九州へとつづく大断層線中央構造線

 7・5キロのダートを走りきると七久保に出る。ここにはポツンと家が1軒。それが「七久保不動院」で、反対方向から来るときの目印になる。国道257号に出たあたりは渓谷美の豊川上流の寒狭峡。

7、暗井沢林道

 岐阜県上矢作町の林道密集地帯には国道257号→418号で入った。その第1本目が暗井沢林道。大船神社を目印にして暗井沢に沿って登っていく。かなり登りつめたあたありで山中の大船神社前を通る。

 大船山(1159m)の山頂周辺の牧場を通り過ぎたところで待望のダートに入っていく。「ツーリングマップル」には恵那山(2191m)方向にロングダートが延び、さらに周回できるダートルートも出ているのでおおいに期待したが、残念ながら3・2キロ地点にゲート。そこで引き返さなくてはならなかった。

8、白井沢合川林道

 暗井沢林道から戻ると、今度は白井沢に沿って登っていく。かなり広い谷間で奥まで集落が点々とつづく。そして阿岳谷鯉子林道(バイクの通行不可)との分岐を左に入ったところからダートがはじまる。

 0・3キロ地点の分岐では「白井沢林道」の表示があり、それに従って左折したら3・5キロ地点(そのうち1・1キロがダート)で行き止まり。白井沢合川林道はその分岐を直進。道幅の広い、走りやすい白井沢合川林道。中津川市との境の峠に向かって登っていくと3・2キロ地点にゲート。このエリアはゲート、ゲート、またゲート。ゲートだらけだ。

9、中腹林道

 国道257号の塞ノ神峠(付知町加子母村の境)トンネルの手前から入った。すぐにダート。二又の分岐を右に登っていくと塞ノ神峠に到達。そこから中腹林道がはじまる。その名の通り白川と付知川の間に連なる山並みの中腹を縫っていく。

 何ヵ所かの分岐があるが、その大半は右へ。左への道の多くは国道257号に降りていく。最後の分岐は左の加子母へ。ところがそこを右に行ってしまい、行き止まりまでの5・9キロを往復した。さらに国道257号から塞ノ神峠までの距離を加えるとダート31・5キロになった。

10、牛首林道

 世界遺産白川郷側から入った。国道156号の鳩谷の北の橋で庄川を渡り、突き当たりのT字交差点の左上に登っていく道が牛首林道。国道から2・4キロ地点でダートに突入。眺めのいい林道。牛首峠に向かって登るにつれて庄川の深い谷を見下ろし、周囲の険しい山々を見渡す。

 牛首峠は岐阜県白川村と富山県利賀村の境。平坦で開けた峠上で新道と旧道が分岐する。旧道はそのまま連続する急カーブで利賀川の谷へと下り、利賀川ダムに出る。ダート11・7キロ。牛首峠で分岐する新道は進入禁止。

11、ふれあい林道

 利賀川ダムのわきを通る県道34号から入った。利賀川ダムから4・3キロ地点が林道入口。そこには「ふれあい林道」の表示。林道の入口からダートがはじまる。気をつけなくてはいけないのは林道入口から3・6キロ地点の分岐。

 左にカーブして曲がっていく道はさらに2又に分かれ、峠を越えていくが、ともに行き止まり林道。無理して下ると、戻れなくなるくらいの急坂だ。メインルートは林道入口から3・6キロ地点の分岐を右にいく道で、すぐに峠を越える。峠を下ると幅広の道になる。

(峠編)

1、久保尾辻

 国道362号の静岡県中川根町・春野町境の峠。展望はよくない。久保尾は中川根町側の峠下集落で銘茶の産地。辻というのは交差点で、峠上で大井川と天竜川を分ける山並みの山上道と、峠道が交差することを意味している。

2、陣座峠

 県道303号で越える静岡・愛知県境の峠。奥山高原から入った陣座峠林道は、この峠のすぐ近くに出る。奥山高原にはもう2本の林道があるが、扇山林道は瓶割峠に、奥山林道は風越峠に出る。うれしい峠密集地!

3、瓶割峠

 県道308号で越える静岡・愛知県境の峠。奥山高原の扇山林道はこの峠のすぐ近くに出る。陣座峠よりも南に位置している。さらに南の静岡・愛知県境の山並みには国道301号の宇利峠、中山峠、国道362号の本坂峠と峠がつづく。

4、国道301号の峠

 雁峰林道の国道301号側の入口は、本宮山に近い名無し峠のすぐ下にある。この国道301号の峠越えルートだが、新城市側は快適なワインディングルートになっている。本宮山には三河一の宮、砥鹿神社の奥宮が祀られている。

5、舞台峠

 国道257号の峠。標高690m。岐阜県加子母村下呂市の境の峠で、ここが同じ岐阜県でも南の美濃と北の飛騨の国境になる。「舞台峠」の峠名は下呂市側の峠下集落に残されているの村歌舞伎の舞台に由来している。

6、宮峠

 国道41号の中央分水嶺の峠。標高800m。久々野町と宮村の境の峠。久々野町側は飛騨川の水系で木曽川となって伊勢湾に流れ出る。宮村側は宮川の水系で神通川となって富山湾に流れ出る。太平洋と日本海を分ける峠だ。

7、牛首峠

 牛首林道で越える岐阜県白川村と富山県利賀村の境の峠。標高1064mの峠上には林道完成碑。「牛首」は岐阜県側の峠下の地名で庄川に流れ込む川も「牛首谷」。このあたりの沢の多くは「何々谷」という。