賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(11)父島(東京)

 (『ジパングツーリング』2001年8月号 所収)

 12時発の「ははじま丸」で母島から父島の二見港へ。

 前日とはうってかわって海は大荒れに荒れている。波が高い。「ははじま丸」は波をよけるためなのだろう、ジグザグに進んだ。

 このような大荒れの天気でも「ははじま丸」は、欠航しないのだ。台風の直撃でもくらわないかぎり、ほとんど欠航することはないという。

 14時30分に父島の二見港に着いたが、父島は激しい雨‥‥。港に近い大村の民宿「南国荘」に宿をとったあと、スコールのような雨をついて、反時計回りで父島を一周。34キロだ。

 二見港に戻ると、「小笠原ビジターセンター」(無料)を見学。アウトリカーのついたカヌーが展示されている。ぼくがこのアウトリカーつきの船を最初に見たのは東アフリカのインド洋岸の漁村だった。インドネシアの島々を東に進んだときも、バリ島の漁村で見た。それと同じものが小笠原にもある。アウトリカーつきの船を通して世界のつながりを見るのだった。

 ここでぼくの目を引いたのは、日本郵船の芝園丸(1934トン)の模型だ。この船は戦前、「東京-小笠原-硫黄島」間を8日で結んでいたという。

 翌日は夜明けとともに「南国荘」を出発。ひと晩、激しく降りつづいた雨は上がり、うれしいことに晴れている。

 まずは父島の最高峰、中央山に向かう。その途中で、朝日が太平洋の水平線上に昇る。中央山には徒歩10分ほどで登れる。山頂には戦時中の高射砲の台座が錆びついて残っている。山頂は開けた園地になっている。展望台に登り、父島を一望した。

 ここに立つ案内板で中央山が父島の最高峰でないことを知った。中央山は標高319メートル。ところがすぐ目の前に見える名無し山はそれよりも7メートル高いという。ちょっぴり残念。

 大村の民宿「南国荘」に戻り、朝食を食べたあと、前日と同じように父島を反時計回りで一周した。まずは海沿いの「海岸通り」を行く。境浦、扇浦ときれいなビーチを見ていく。次ぎに「小港道路」に入り、小港海岸へ。きれいなビーチを歩いたあと、遊歩道で中山峠を越え、ブタ海岸まで歩いた。中山峠は眼下に小港海岸を見下ろす“絶景峠”だ。最後に「夜明道路」を走り、二見港に戻った。

 MX50の手続きを終えたところで、大村をプラプラ歩く。その名も「島寿司」という店に入り、まずは冷えたビールで小笠原に「乾杯!」。そのあとで名物の「島寿司」を食べた。

 東京行きの「おがさわら丸」に乗る。14時、出港。何隻もの船が二見湾の出口まで見送ってくれる。父島が見えなくなったときは寂しさに襲われた。