賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第33回 喜屋武岬(きゃんみさき・沖縄)

 (共同通信配信 1990年)

 沖縄の人たちはよく、「辺土岬から喜屋武岬まで」という。沖縄本島最北端の辺土岬から最南端の喜屋武岬までということで、沖縄本島の全土を意味している。

 その喜屋武岬には与那原から国道331号で向かい、途中、沖縄第一の聖地、斉場御嶽に立ち寄った。歴代の琉球王たちが欠かさずに参拝したところ。本土でいえば伊勢神宮のようなところだが、御嶽は自然そのものが拝殿であり本殿なのだ。

 斉場御嶽はタブやシイ、クス、アカギなどの常緑樹がうっそうと茂り、昼なお暗い世界になっている。いかにも神々が宿っていそうな岩の下に拝所があって、黒い線香と米粒、菊の葉、赤い饅頭が供えられていた。

 摩文仁の丘やひめゆりの塔などの南部戦跡を見てまわり、喜屋武岬に行くと、そこには白い灯台と平和の塔が建っていた。摩文仁の丘から喜屋武岬にかけての島尻地方は、太平洋戦争末期の沖縄戦最大の激戦地。アメリカ軍に追いつめられた数万の沖縄住民や学徒隊、防衛隊、そして日本軍の将兵が最期をとげた沖縄戦終焉の地でもある。平和の塔の前で心より手を合わせた。

 東シナ海に突き出た岬の突端に立つと、さらに南にもうひとつの岬、荒崎があった。そこまで行ってみる。

 4輪駆動車がやっと走れるくらいのガタガタ道の行き止まり地点に50ccバイクを止め、覆いかぶさる草木を払いながら歩き、荒崎の岩場に出た。

「もうこれ以上、沖縄本島に南はない!」

 という地点まで歩き、そこで東シナ海の水平線に近づいた夕日を眺めた。水平線に沈んでいく夕日を眺めながら、いい知れぬ満足感に浸るのだった。