日本列島岬めぐり:第28回 神崎鼻(こうざきばな・長崎)
(共同通信配信 1990年)
北松浦半島の神崎鼻は、日本本土最西端の岬である。
とはいっても最北端の宗谷岬や最東端の納沙布岬、最南端の佐多岬に比べると、ほとんど知られていない。
北松浦半島には焼き物の町、伊万里から入り、日本最西端駅に立ち寄った。1978年の「日本一周」で来たときは「国鉄・平戸口駅」だったが、それが「松浦鉄道・たびら平戸口駅」に変わっていた。
1978年の「日本一周」では神崎鼻を探し当てるのにずいぶんと苦労した。町役場で聞いてみても、よくわからない。地図で見当をつけて神崎漁港まで行った。浜で魚を干していたおばさんたちに聞いてみたが、地元の人たちでさえそこが日本本土最西端の地であることを誰一人、知らなかった。
というよりも、目の前に平戸島が長々と横たわっているので、最西端の意識がほとんどなかったといった方がより正確であろう。
神崎鼻はこの10年余で大きく変った。町の案内図にはひと際目立って「日本本土最西端の地」が書き込まれ、神崎鼻に入る道の角には「日本本土最西端・入口」の看板が立っている。また神崎鼻まで来てみると、案内図まで出ていた。
コンクリートの遊歩道を歩いた行き止まり地点には、
「日本本土最西端の地 北緯35度12分53秒 東経129度33分17秒」
と彫り刻まれた立派モニュメントが建っていた。
一体、この10年余の間に何が起きたのだろうか。
神崎鼻の岩場は磯釣りには絶好のポイントで、何人もの釣り人たちが釣り糸を垂れていた。目の前には平戸島のほかに、西海国立公園の九十九島の小島群が散らばり、水平線上のはるかかなたには五島列島の島影が見えた。