日本列島岬めぐり:第26回 日御碕(ひのみさき・島根)
(共同通信配信 1990年)
鳥取県と島根県の県境は分かりにくいが、米子と日本海有数の水揚げ高を誇る漁港の境港は鳥取県である。境港から境水道橋を渡った島根半島の美保関は島根県になる。
地図を見ると、島根半島がじつに奇妙な形をしていることがよくわかる。どこからか無理やり引っ張られてきて、強力な接着剤かなにかで宍道湖、中海の北岸にくっつけられたような地形、とでも言えばいいのだろうか。
本来ならばその南の米子、松江、出雲市辺りが海岸線になっていいはずである。この奇妙な形の島根半島こそが出雲神話の古里だ。
まずは、島根半島東端の地蔵崎に行く。ここには美保関灯台があり、岬の突端に立つと、隠岐の島影がくっきりと水平線上に浮かび上がっていた。
地蔵崎は古来「美保之碕」と言われてきたが、出雲神話の「国引伝説」では能登半島から引っ張られてきたことになっている。海越しに眺める大山を杭にし、綱を掛けて引っ張った。皆生温泉から境港にかけて延びる弓ヶ浜は、その綱の跡だという。
次に、島根半島西端の日御碕に行く。岬の突端には高さ44メートルの日本一のノッポ灯台が立っている。息を切らし、足をガクガクさせて登りつめた灯台の上からの眺めはすばらしく、島根半島北岸の海岸線を一望できた。
日御碕は出雲神話の「国引伝説」によると、朝鮮半島から引っ張られたことになっている。出雲・石見国境の三瓶山に綱を掛けて引っ張り、その綱の跡が園の長浜だという。
また島根半島は隠岐やロシアの沿海州辺りから引っ張られてきたことになっている。
日御碕に立って地図を見れば見るほど、出雲神話の「国引伝説」が真に迫ってくるのだった。