賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(7)式根島

 (『ジパングツーリング』2001年7月号 所収)

式根島

「伊豆七島」というと、伊豆大島、利島、新島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島の7島で、その中に式根島は含まれない。式根島を入れて「伊豆八島」という場合もあるらしい。また「伊豆五島」というと、伊豆大島、利島、新島、式根島、神津島のことになる。

 式根島は新島の属島なのだ。古くは新島につながっていたといわれている。近世初期には無人島だったものが、近世後期に新島からの漁民が移り住み、漁村ができたという。そのため今でも式根島は利島の倍の人口600人を数えるが、式根島村ではなく、新島村の一部になっている。

 式根島は周囲が12キロの小さな島。北の野伏港と南の式根島港を結ぶ「式根本道」が島の幹線道路だが、端から端まで全部走っても、わずか3キロでしかない。そんな小さな式根島だが、海岸美は見事だ。

 泊浦、大浦、中の浦はきれいな砂浜で、海水浴場になっている。そのうち、中の浦では、誰もいないのをいいことに、素裸になって今年の初泳ぎをした。すこし海水が冷たかったが、3月でも十分に泳げる。

 そんな式根島の海岸には足付温泉と地鉈温泉の海中温泉がある。ともに海を眺めながら湯につかる無料の混浴大露天風呂。自然そのまんまといった温泉だ。ほかには誰もいないので、この自然度満点の温泉を自分一人で独占!

 足付温泉の周辺は「式根松島」といわれ、温泉と黒松、白砂ならぬ白石の3点セット。風光明媚な温泉だ。

 地鉈温泉は「日本の秘湯」。駐車場にバイクを停め、鉈で断崖をブチ割ったようなV字の谷に歩いて下っていくと、その先の海岸に天然の露天風呂がいくつかある。ブクブクと湯が湧き出る源泉近くは熱くて入れないが、海寄りの岩間の湯溜まりはちょうどいい湯加減。こんな温泉が小さな島にある!