賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(6)

 (『ジパングツーリング』2001年7月号 所収)

新島

 新島は南北に細長い島で、島一周の道はない。そこで新島港に着くと、新島の中心、本村からまずは北へ。全長739メートルという長い新島トンネルを抜け、北端の集落、若郷まで行った。10キロほどだ。

 昨年(2000年)の大地震のすさまじさをみせつけるかのように、集落をとりまく山肌はいたるところで崩れ、集落内でもずいぶんと大きな被害が出た。幸い死傷者は出なかったが、これは奇跡だと若郷の人たちはいっていた。

 若郷から本村に戻ると、今度は南へ、やはり10キロほど走ると、自衛隊のミサイル試射場で行き止まりになる。高台に立つと、新島最南端の岬、神渡鼻に立つ白い新島灯台が見える。その先に早島。さらにその向こうには神津島が見える。

 新島では本村の民宿「角七」で泊まった。夕食後、宿のおかみさんに無理をいって、土産物店で買った新島名産の“くさや”を焼いてもらった。青むろ(ムロアジ)の干物だ。それを部屋でビールを飲みながら食べた。部屋中にくさやの強烈な匂いが充満する。くさやは、味と匂いが反比例しているようで、くさければくさいほど味がいい。

 くさやは先祖伝来の、魚のはらわたなどが入った塩分の強い液に開いたムロアジなどの魚を浸し、それを天日で干したもの。伊豆諸島のほかの島々や伊豆半島にもあるが、くさやといえば新島が発祥の地なのだ。

 民宿の部屋で一人ビールを飲みながら本場もののくさやを食べていると、旅している自分をくさやの匂い以上に強烈に感じ、心底、うれしくなってくるのだった。

たまらず管理人:

「風呂入ってたよね?」て、違うか。