日本列島岬めぐり:第22回 入道崎(にゅうどうざき・秋田)
(共同通信配信 1990年)
天下の奇祭「なまはげ」で知られる男鹿半島は東西28キロ、南北20キロ、その最北端が入道崎である。
男鹿半島は「男鹿島」ともいわれる通り、大昔は島だった。それが秋田県の二大河川、米代川と雄物川の運ぶ土砂によってつくられた砂丘で陸続きになった。北の米代川がつくり出したのが能代砂丘、南の雄物川のが天王砂丘である。
入道崎は秋田県内でも屈指の観光地で、大駐車場は観光バスや乗用車で満車状態。凝灰岩や集塊岩から成る海岸段丘が海に落ちる崖っぷちでは子供たちがたこ揚げをし、恋人たちが肩を寄せ合って海を見ていた。
岬の先端に立つ高さ24メートルの白黒2色の灯台に息を切らせて登ると、岬周辺の海岸線を一望。眼下に水島を見下ろした。
入道崎のすぐ近くに畠漁港がある。急坂を下って漁港に降りてみた。この辺は冬のハタハタ漁で知られているが、漁から帰ったばかりの漁師さんは、
「(ハタハタは)最近は獲れなくなったなあ…。12月からが漁期だけど、最盛期はほんの10日ほどでしかない」
といって嘆いていた。
この漁師さんは秋田名物の「しょっつる」についても話してくれた。
「昔はどの家でも自家製のしょっつるをつくっていた。しょっつるを買うなんて考えられなかったよ。それが今ではどの家も醤油を買っている」
「しょっつるはハタハタだけでなく、コウナゴからもつくっていたな。ハタハタやコウナゴを半年から1年、桶に漬け込んで塩辛にして、袋に入れて搾った汁がしょっつるだよ」
男鹿半島の「しょっつる」は、能登半島の「いしる」と並んで、日本に最後まで残った魚醤油。半島というのは、古い文化の残るところなのである。