賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第17回 宗谷岬(そうやみさき・北海道)

 (共同通信配信 1990年)

 オホーツク海沿いの国道238号を一路北に向かい、日本本土最北端の宗谷岬に到着。北緯45度31分41秒の「日本最北端の碑」に立つと、目の前の宗谷海峡を隔てて水平線上にくっきりとサハリンの島影が浮かび上がっている。

「おー、サハリン!」

 そんな言葉が思わず口をついて出る。

 宗谷海峡をはさんだ対岸はサハリン最南端のクリリオン岬。日本時代は西能登呂岬と呼ばれていた。宗谷海峡の幅は43キロでしかない。

 宗谷岬には間宮林蔵の像が立っている。岬に近い珊内(さんない)は古くから樺太(サハリン)への渡海地として知られ、間宮林蔵もそこから文化5年(1808年)に渡ったという。

 日本に居ながら国境の向こうの異国を見ると、無性に海の向こうの世界へと夢を駆りたてられてしまう。

 白亜紀の砂岩、頁岩からなるという岬の高台に上がると、霧信号所や無線方位信号所もある赤白2色の灯台が立ち、船舶の安全を守っている。

 北の海峡を押さえる要衝の地らしく、明治35年に建設された海軍の望楼が今でも残っている。

 宗谷岬では民宿「柏屋」に泊まった。部屋の窓を開け、薄暮の中に消えていくサハリンの島影を眺めつづけた。

 宿のテレビで天気予報を見ると、前線が日本列島にべったり張りつき、北海道を含めて日本中が雨だった。その中で宗谷地方だけに晴れマークがついていた。異国を望む宗谷岬は日本の中にあって異郷の地なのかもしれない。