賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第16回 能取岬(のとろみさき・北海道)

 (共同通信配信 1990年)

 知床半島突端の知床岬から、日本本土最北端の宗谷岬までのオホーツク海の海岸線は単調だが、その間には網走の能取岬がある。キタキツネがよくやってくる。

 JR網走駅前から北の12キロ走ると、能取岬に到着。岬周辺の広々とした牧草地は牛や馬を放牧する美岬(みさき)牧場だ。

 高さ5、60メートルの海食崖で囲まれた岬の先端に立つと、オホーツク海の向こうに知床半島の山々が見える。岬下の岩礁地帯には、冬になると、アザラシの群れがやってくる。

 岬の突端には、白と黒に塗り分けられた八角形の灯台が立っている。かつては流氷が接岸する1月下旬から3月下旬まで休灯していたという。いかにも「流氷の岬」らしい話ではないか。

 私は何年か前に、流氷を見たくなり、2月上旬の網走の町にやってきたことがある。オホーツクの海をびっしりと埋め尽くした流氷の光景は異様なもので、とても日本だとは思えなかった。流氷は強い風が吹き始めるとあっというまに離岸し、その先端はストンと海に落ち込み、崖のようになっていた。そこに荒波がぶち当たり、波しぶきが高く舞った。 砕けた流氷は波間で揺れ動き、ものすごい音をたててぶつかり合った。巨大な流氷がまるで踊るかのように、立ち上がったり、ひっくり返ったりする様子を我を忘れて眺めつづけた。

 能取岬に立っていると、その時の、「流氷のオホーツク海」の光景がまざまざとまぶたに浮かんでくる。

 能取岬を離れると、能取湖畔の道を走った。サンゴ草が色づいて、まるで深紅の絨毯を敷つめたかのような色鮮やかさだった。

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管理人コメント:

>私は何年か前に、流氷を見たくなり、2月上旬の網走の町にやってきたことがある。

ううっ、自由人はいいなぁ。(皮肉ではなく)