賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

海道をゆく(5)「若狭海岸編」ガイド

 (『ツーリングGO!GO!』2004年9月号 所収)

1、レインボーライン

常神半島の付け根を走る有料道路。若狭の海と山、湖を存分に味わえる。美浜町の笹田から三方町の海山までの11・24キロ。

圧巻は駐車場からリフトで登れる梅丈岳山頂からの眺め。足下には三方五湖最大の三方湖と水月湖、菅湖が見える。目をずらすと残りの日向湖、久々湖の2湖が見える。その向こうには若狭と越前の境となる山並みがつらなっている。

これら三方五湖のうち三方湖は淡水湖。水月湖、菅湖、久々湖は淡水と海水が混じり合った気水湖。日向湖は海水湖、と水質が違うので、湖の色がひとつひとつ違って見える。山頂には歌手、五木ひろしの石碑「五木の園」もある。バイクの通行料は700円。

2、エンゼルライン

内外海半島の最高峰、久須夜ヶ岳(619m)の山頂へと通じる道。昨年(※2003年)までは有料道路でバイクの料金は1660円とバカ高かったが、昨年めでたく無料化となり、現在は県道107号の一部になっている。

久須夜ヶ岳に登っていく途中からの眺めがすばらしい。南側では深く切れ込んだ小浜湾と小浜の市街地を見下ろし、北側では常神半島と御神島を見る。若狭湾を一望する山頂からの眺めもすごいが、山が高い分、若干、迫力の欠けた眺望になる。久須夜ヶ岳を下って左折すると、県道107号の行き止まり地点、泊漁港まで行ける。そこから見る小浜湾もいい。

3、蘇洞門海岸

「蘇洞門」は内外海半島北側の奇岩・洞窟・断崖がつづく6キロほどの海岸。「若狭フィッシャマンズ・ワーフ」の前から蘇洞門めぐりの船が出ている。

鎌の腰掛け、唐船島、網掛け岩、夫婦亀岩などと名前のついた奇岩や海に流れ落ちる白糸の滝などをみてまわり、蘇洞門のシンボルといってもいい大門、小門で船は折り返す。そこには船着場があり、乗客は上陸し、大門、小門を裏側から見るようになっている。

「そとも」は内外海半島の外側の面という意味で「外面」と書かれたようだ。それが江戸時代の文人趣味で「蘇洞門」とい漢字が当てられ、現在に至っているという。文化の高い小浜を象徴するような話だ。

4、遠敷の里

小浜の郊外、R27から遠敷川沿いに入っていった遠敷の里は、まさに若狭の歴史の古さを感じさせる。県道35号を行くと、右手にこんもりとした森に囲まれた若狭姫神社がある。この神社は若狭の一宮、若狭彦神社の下社で、境内には千年杉がある。その先には若狭彦神社の上社。うっそうとした杉木立に囲まれている。これら2社の手水はすこぶるうまい。ぜひとも飲んでみたらいい。

「森林の水PR館」の前を通りすぎると、右手には神宮寺。奈良・東大寺二月堂の「お水取り」用の水が送られる「お水送り」の行事のおこなわれる寺。その先が遠敷川の鵜の瀬。「日本の水100選」にもなっているが、ここの水が東大寺の「お水取り」の水になる。小浜は京都のみならず、奈良とも深く結びついていた。

5、瓜割の滝

上中町のR27からわずかに南に入ったところにある。駐車場から300メートルほど歩いたところが瓜割の滝。天徳寺内の滝。高さはたいしたことはないが、この水のすべてが音をたてて流れ落ちる滝のすぐ上の岩の間から湧き出ているのだ。

その湧出口を見ると、信じられない光景を目にしたような気分になる。「日本の名水100選」にも選ばれているが、この水を求めて遠方かららも多くの人たちがやってくる。うまいだけでなく、体にすごくいいという評判の水。山々が海岸まで迫る若狭は名水のふるさとのようなところだ。

6、熊川宿

若狭街道(R303)の宿場町。昔ながらの宿場の面影がよく残されている。若狭街道は小浜から熊川を通り、近江(滋賀県)に入り、水坂峠(保坂峠)を越えて琵琶湖畔の今津港に通じていた。

今津港からは琵琶湖の船で大津へ、そこから京都へ。まさに若狭と京の都とを結ぶ街道で、大陸の文化もこの街道を経由して京都にもたらされた。

また熊川宿は「鯖街道」の宿場としても知られている。若狭湾でとれたサバは浜でひと塩され、それを「背持さん」が背負って京都まで歩いて運んだ。熊川は昔からの「熊川葛」の産地。熊川の葛も京都に運ばれた。熊川宿にはくず切りやくず餅を食べられる店もある。