賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

秘湯めぐりの峠越え(16)坤六峠編

 (『アウトライダー』1996年6月号 所収)

4湯連チャン…

 金精峠を下った片品村の中心、鎌田で、沼田に通じるR120と分かれ、R401で尾瀬に向かっていく。

 R401沿いの片品温泉「千代田館」(入浴料500円)と、尾瀬戸倉温泉「富士見旅館」(入浴料500円)の2湯をハシゴ湯する。「金精峠編」の白根温泉から数えると、4湯連チャンになるので、けっこう足腰にくる。

坤六峠越え

 尾瀬戸倉温泉のある戸倉でR401(群馬県側のこの国道は、尾瀬の三平峠下で行き止まりになる)と分かれ、群馬県道60号片品水上線で坤六(こんろく)峠に向かっていく。

 富士見峠に通じる道(途中からは登山道)と分岐し、鳩待峠に通じる道(峠で行き止まりになる)と分岐する。これら、尾瀬の南側の、三平峠、富士見峠、鳩待峠は中央分水嶺の峠で、峠を越えた北側の尾瀬沼や尾瀬ヶ原は、只見川→阿賀川→阿賀野川と、日本海に流れ出る川の水系になる。それに対してそれら尾瀬の峠の南側は、太平洋に流れ出る利根川の支流、片品川の水系になる。

 かつてはハードなダートだった坤六峠の峠道も、いまでは全線が舗装路。快適な山岳ツーリングコースになっている。晩秋の北関東の、尾瀬へとつづく山々の風景を眺めながら走り、片品村と水上町の境になっている坤六峠に到着。

 峠には、坤六峠越えの林道完成記念碑が建っている。それをみるとわかるが、昭和43年の林道完成時の群馬県知事は神田坤六さんという人。そうなのだ、坤六峠の峠名は、この坤六さんからきている。政治家という人種は、ほんとうに名前を残したがるもののようだ。

利根川本流沿いの温泉めぐり

 坤六峠を越え、利根川の支流、片品川の水系から、利根川本流の水系に入っていく。

 坤六峠下の湯ノ小屋温泉では、「龍神」(入浴料1000円)の大露天風呂に入った。湯につかりながら、渓流美と紅葉美を同時に楽しんだ。この露天風呂では沼田市内の救急病院の先生と一緒になり、いろいろと話した。まだ若い先生だったが、こうして自然に囲まれた温泉に入るのが何よりもの息抜きになるという。

 つづいて、宝川温泉「汪泉館」の露天風呂に入った。入浴料は1800円。入ろうかやめようか、さんざん迷ったが、一軒宿の宝川温泉を落としたくなかったので1800円を払った。温泉に入るさいの入浴料だが、ぼくはいちおう1000円を目安としており、それ以上のところには、よっぽどのことがないかぎり入らない。

 宝川温泉は人気の湯なので、入浴料が1800円でも、宿前の駐車場は車で満杯だ。

 利根川の本流沿いに走り、藤原ダムを通り、R291に合流し、水上温泉へ。

 関東でも有数の大温泉地の水上では、ちょっとわかりずらい場所にある共同浴場(入浴料70円)の湯に入る。湯船は小さいが、ザーザー音をたてて湯があふれ出ている。

 最後の温泉は、谷川岳方向に向かって、3、4キロほど山中に行った谷川温泉。

 ここでは、町営「湯テルメ谷川」(入浴料500円)の大浴場と露天風呂に入った。露天風呂では、隣の女湯から聞こえてくる若い女性たちの声が気になった。車で旅している彼女たちとは、「湯テルメ谷川」に同時に着いて、同時に入ったからだ。女子大生風のかわいらしい女性たちだった…。

 こうして「金精峠編」&「坤六峠編」の中禅寺温泉から谷川温泉まで、全部で12湯の温泉に入った。

 水上からはR291→R17で沼田へ。「日光→沼田」の165キロが、北関東温泉三昧の第1弾だ。