賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

海道を行く(3) 北海道編 番外編その5

 (『ツーリングGO!GO!』2005年7月号 所収)

41、納沙布岬(感動度☆☆☆☆☆)

 東経145度49分01秒の「日本本土最東端」の岬。「日本最東端」は東経153度59分11秒の南鳥島になる。岬の灯台に立ったときは心底、驚いた。今までも何度か、ここから北方領土の島々を見たが、今回はそれ以上にはっきり、くっきりと歯舞諸島の島々が見えたのだ。珸瑤瑁水道越しに見る貝殻島は手が届きそうなほど近かった。思わず「近い!」と声が出た。右手には萌茂尻(もえしり)島と勇留(ゆり)島、秋勇留(あきゆり)島。左手には平べったい水晶島が長々と横たわっていた。萌茂尻島近くを航行するロシアの警備艇も肉眼ではっきりと見えた。納沙布岬で太平洋からオホーツク海へと海が変わる。2つの海のぶつかる納沙布岬なのでしばしば濃霧に見舞われる。

42、R244(絶景度☆☆☆☆)

「根室→網走」間の海道ルート。知床半島のつけ根は根北峠で越える。別海から標津までの間では根室海峡(オホーツク海)越しに国後島を見ながら走る。海の上にぽっかりと国後島の雪山が浮かんでいる。右手前方には知床の雪の連山。海の青さと雪の白さの対比が鮮やか。この季節ならではのすばらしい光景だった。別海でR243と分かれるが、R243は「根室→網走」間の内陸ルートで美幌峠を越える。

43、根北峠(面白度☆☆☆☆)

 R244の根室・北見境の峠。4月下旬の根北峠はまだまだ雪がすごかった。峠近くの道の両側には、人の背丈よりもはるかに高い雪が積もっている。その雪の壁の中を走っていく。ここより知床岬へと知床半島の連山が連なっていく。北海道の峠名は根北峠のような峠名が多い。石狩・十勝境の狩勝峠、石狩・北見境の石北峠、日高・十勝境の日勝峠、釧路・北見境の釧北峠、手塩・北見境の天北峠…といった具合だ。

44、網走の天都山(絶景度☆☆☆☆)

 網走駅の裏手の山で標高207m。山頂までバイクで行ける。そこには「オホーツク流氷館」(入館料520円)。展望台からは網走の市街地を見下ろし、長く延びるオホーツクの海岸線、斜里岳、知床連山を一望。目の向きを変えると網走湖、能取湖を見下ろす。実物の流氷を展示し、氷点下12度の「流氷体験館」もある。天都山をすこし下ったところには「北方民族博物館」(入館料450円)。復元されたイヌイット(エスキモー)の竪穴住居が展示されている。丸木舟やカヤック、シラカバの樹皮でつくられた舟、漁労や狩猟の用具に目が行く。網走市のモヨロ貝塚から出土した土器の数々も展示されている。それらを見て北方民族の文化の高さを思い知らされた。オホーツク以北の世界というのは、決して「文化の果てる地」ではない。

45、「網走市サイクリングターミナル」(快適度☆☆☆☆)

 網走では「網走市サイクリングターミナル」に泊まった。整った設備の宿泊施設で、ここでは国民宿舎よりも安い料金で泊まれた。ぼくはけっこう日本各地で使っているが、山口県の防府では夜の8時過ぎに飛び込みで行って泊めてもらったことがある。「サイクリングターミナル」はけっこう無理を聞いてくれる。本来はサイクリング用の宿泊施設だが、我らツーリングライダーが行ってもいやな顔をされることはない。北海道ではほかに士別や音更、滝川など10ヵ所にある。

46、能取岬(絶景度☆☆☆☆☆)

 網走市内から道道76号で行く能取岬は知床半島の絶好の展望台。駐車場にバイクを停め、白黒2色の灯台のわきから断崖の突端まで歩いて知床の連山を眺めた。乳房型をした知床半島の最高峰、羅臼岳がひときわ目立っている。その右手のカクンと落ち込んだところが知床峠。知床岬へとつづくオホーツクの長い海岸線も一望する。距離を置いて眺める知床半島というのもいいものだ。今回は雪で入れなかっただけに、よけいそう感じた。能取岬の周辺は広々とした牧草地。そこは牛や馬を放牧する市営の美岬(みさき)牧場になっている。

47、R238(絶景度☆☆☆☆)

「網走→稚内」間の海沿いのルート。網走を出ると網走湖、能取湖、サロマ湖と湖を見ながら走り、紋別を過ぎたあたりからはオホーツク海を見ながら走るようになる。宗谷岬をめざしてオホーツクの海岸を北上していると、日本のてっぺんに向かっているかのような雄大な気分になる。海もデッカイ、陸もデッカイので、バイクに乗りながら「デッカイドー!」などと叫んでしまう。宗谷岬を過ぎると、オホーツク海から日本海へと海が変わり、稚内の町に入っていく。

48、キムアネップ岬(絶景度☆☆☆)

 サロマ湖に突き出たこの岬に立って北海道最大(日本第3位)の大湖を眺めた。日本離れした湖の風景。湖面が茫洋と広がっている。ここは海のような広がりだが、湖面には波ひとつない。正面の水平線上には長々と延びる砂州。砂州の途切れたところでオホーツク海とつながっている。岬の突端には「キアムネップ岬キャンプ場」(無料)がある。

49、北緯45度線(面白度☆☆☆☆)

 枝幸(えさし)を過ぎると、「北緯45度線」を越える。R238には「北緯45度線」のモニュメントが建っているが、それが実にいいのだ。「北半球のど真中」と書かれているからだ。いわれてみればその通りで、まさにここは北半球のど真中。西には中国のハルビンやルーマニアのブカレスト、イタリアのトリノ、東にはアメリカのポートランドやミネアポリス、カナダのオタワなどの都市名が書かれている。一瞬、「世界一周ツーリング」をしているような気分に浸れる。

50、クッチャロ湖(絶景度☆☆☆)

 道北最大の湖で北の小沼と南の大沼に分かれている。「白鳥の湖」で知られているが、湖に突き出た桟橋に立つと、白鳥がすぐ近くまで寄ってくる。思わず愛犬と同じように頭をナゼナゼしてあげたくなるほど愛くるしい。湖畔には浜頓別温泉の国民宿舎「北オホーツク荘」と「はまとんべつ温泉ウイング」の2つの宿。ともに入浴可。「クッチャロ湖畔キャンプ場」(有料)もある。