賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

海道を行く(3) 北海道編 番外編その4

 (『ツーリングGO!GO!』2005年7月号 所収)

31、釧路の和商市場(美味度☆☆☆☆☆)

 釧路の和商市場といえば、我らライダーにとっては函館の朝市と並ぶ北海道の2大市場。海産物の並ぶ市場内を歩いたあと、「市場亭」で「いくら丼」(1470円)を食べた。ここのはすごい。上にのったつややかな輝きのイクラが丼を埋めつくしている。イクラ丼は北海道各地で食べられるが、ぼくにとって「イクラ丼」といえば和商市場なのだ。今ここで人気なのは自分好みのネタを選べる「勝手丼」。去年、ここで食べたときはサーモン、イクラ、ホタテ、ボタンエビ、甘エビ、本マグロ、クジラ肉、真ダイ、真ダコと選んで1650円。「安い!」と思った。そして何よりもすごいのはネタが新鮮なことだ。

32、厚岸(あっけし)(美味度☆☆☆☆)

 江戸時代からの道東開拓の拠点になった町。近藤重蔵や間宮林蔵らの探検家も厚岸を北方探検の根拠地にした。カキで有名な厚岸だが、R44で通り過ぎていてはわからない。R44を外れて一歩、町内に入ったらいい。カキのうまい店といえば厚岸駅前の食堂「浜のれん」。ここでは「カキ丼」に「カキラーメン」、「酢ガキ」とカキ三昧をした。厚岸大橋を境に厚岸湖と厚岸湾に分かれているが、厚岸湖はカキ漁の盛んな湖。湖上には大小数十もの牡蠣(かき)島がある。これらはカキ殻が堆積したもの。昔は30センチもある大きなカキがとれたという。今は養殖ものが大半だ。ちなみに厚岸はアイヌ語の「アッケシイ」(カキのいる所)からきているという。厚岸大橋を渡った先の国泰寺は「蝦夷三大寺」のひとつ。ここはまた桜の名所としても知られているが、「日本列島桜前線」最後の地。4月下旬でも、花の季節はまだまだ遠かった。

33、道道123号→道道142号(絶景度☆☆☆)

 厚岸から根室までの海沿いのルート。R44ではまったくみられない道東の北太平洋岸の世界を見ることができる。寒々とした風景。集落もほとんどない海岸線が続く。その途中では厚岸の愛冠岬や霧多布島のアゼチの岬と霧多布岬、落石港の落石岬、花咲港の花咲岬と道東の岬に立ち寄った。

34、愛冠岬(絶景度☆☆☆☆☆)

 R44から厚岸に入り、厚岸大橋を渡り、そのまま直進すると愛冠岬への入口。駐車場から岬の展望台までは300mほど遊歩道を歩く。岬の上は平坦な台地で草原になっている。正面には大黒島と小島の2つの島、厚岸湾の対岸には尻羽岬を眺める。大黒島は周囲5キロほどの無人島で断崖に囲まれているが、さまざまな海鳥が飛来し、北海道でも屈指の海鳥の繁殖地になっている。この島の周辺はニシンの好漁場。すっかり北海道から姿を消してしまったニシンだが、厚岸港には毎年、かなりの量の地元産のニシンが水揚げされている。

35、霧多布(きりたっぷ)島(絶景度☆☆☆☆)

 道道123号から霧多布大橋を渡って入っていく。もともとは砂州でつながっていた霧多布半島だったが、昭和27年の十勝沖地震と昭和35年のチリ沖地震の大津波で砂州が切られ、今では霧多布島になっている。この島の入口が浜中町の中心。町役場もここにある。島の突端が霧多布岬(湯沸岬)。岬には赤白2色の灯台。長くつづく海岸線の向こうに落石岬が見える。ここには「きりたっぷ岬キャンプ場」(無料)もある。それともうひとつ、島の反対側にはアゼチの岬。目の前には小島と嶮暮帰(けんぼっけ)島。琵琶瀬湾の対岸には霧多布湿原が広がる。ここには目の前に島が浮かんでいるので、霧多布岬以上の絶景をつくり出している。

36、落石岬(絶景度☆☆☆☆)

 北太平洋シーサイドラインの道道142号から入っていく。落石漁港を過ぎた行き止まり地点が岬の入口。そこから遊歩道を歩いていく。木道で湿地を歩き、木道が尽きると、岬の先端の赤白2色の灯台に出る。灯台の周辺はまるで絨毯でも敷きつめたかのようなフカフカの笹原。その先はストンと海に落ちる断崖だ。

37、花咲漁港(美味度☆☆☆☆☆)

 花咲ガニの本場。7月から10月にかけてが漁期でカニ漁の船は納沙布岬周辺の漁場に出ていく。漁港前の「吉野商店」ではその場でゆでた花咲ガニをまるごと食べられる。コンブ汁のダシ汁で10分ほど炊きあげたもの。鮮度満点。身だけでなく、ホクホク感のあるカニ味噌もメチャクチャうまい。カニ漁の船は歯舞港と落石港からも出る。今ではロシア産の花咲ガニが入ってくるので1年中、食べられる。

38、花咲岬(絶景度☆☆☆☆)

 花咲漁港の天然の防波堤になっている。落石岬もそうだが、「岬のあるところ、漁港あり」だ。岬の突端には赤白2色の灯台。そこからはモユルリ島とユルリ島の2島が見える。岬が海に落ち込んだ海岸には国の天然記念物にもなっている「根室車石」。放射状節理の球体をした玄武岩。車輪にも見えるし、大輪の花のようにも見える。

(根室→稚内)編

39、根室の「北方資料館」(歴史度☆☆☆☆)

 根室に到着すると、JR根室本線の終着駅、根室駅前でバイクを停めた。いかにも「日本の最果て」を感じさせるところで、「遠くまで来たなあ」という気分にさせる。根室は日本で一番東の市。市内では「北方四島交流センター」内にある「北方資料館」(無料)を見学したが、そこには高田屋嘉兵衛の「辰悦丸」の模型が展示されていた。また江戸時代の探検家、近藤重蔵の北方探検ルートも紹介。択捉島の最北端まで行っている。

40、道道35号(感動度☆☆☆☆)

 根室半島一周ルート。半島の南側(太平洋側)が納沙布岬への最短ルートで歯舞、珸瑤瑁(ごようまい)を通っていく。歯舞、珸瑤瑁にはともに漁港。歯舞漁港はかなりの大きさ。珸瑤瑁には日本で一番東の郵便局がある。歯舞は旧歯舞村の中心で、旧歯舞村には根室半島の東側と歯舞諸島が含まれた。納沙布岬をまわりこんだ半島の北側(オホーツク海側)からは海越しに知床の連山と国後島がよく見えた。感動の根室半島一周。