賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

海道を行く(3) 北海道編 番外編その3

 (『ツーリングGO!GO!』2005年7月号 所収)

21、R278(絶景度☆☆☆)

「函館→森」間の海沿いのルート。本州への最短地点の汐首岬、コンブ漁の盛んな南茅部(今は函館市)、間歇泉のある鹿部温泉と通り、森でR5に合流。汐首岬を過ぎると、海は津軽海峡から太平洋へと変わり、砂崎を過ぎると内浦湾(噴火湾)へと変わていく。鹿部町から森町に入ったあたり眺める駒ヶ岳の山の姿がじつにいい。牧草地の向こうにスーッと裾野を延ばした駒ヶ岳が聳えている。

22、汐首岬(絶景度☆☆☆)

 ここが本州への最短地点。下北半島の大間崎まではわずかに17・5キロ。ちなみに白神岬から津軽半島の龍飛崎までは20キロ。対岸の下北半島の山々がくっきりと見える。正面の大間崎のみならず、左手の尻屋崎もはっきり見える。ここまでが津軽海峡で、汐首岬を過ぎると海が変わり、太平洋になる。太平洋側の漁村ではコンブ漁が盛ん。家々の前にはきれいに小石を敷きつめたコンブの干し場が見られる。

23、恵山(えさん)岬(絶景度☆☆☆☆)

 火山の恵山(618m)が海に落ち込んだ突端の岬。恵山が爆発してそのまま海に落ちたという感じの地形で岬を通り抜ける道はない。で、R278から南側、北側、それぞれの行き止まり地点まで行った。南側には御崎海浜温泉の屋根つき露天風呂(寸志)、北側には水無海浜温泉の海中露天風呂(無料)がある。北側の行き止まり地点が恵山岬で海岸段丘の台地上には白亜の灯台。灯台に隣接して「灯台資料館」(入館料400円)。そこには初代の恵山岬灯台の模型が展示されている。

24、鹿部の「しかべ間歇泉公園」(面白度☆☆☆☆)

 ここでは北海道で随一の間歇泉が見られる。10分間隔で高さ15mまで噴き上げる。100度近い熱湯だ。ほぼ10分ごとに噴き上げる間歇泉を見ていると自然の不思議さを感じてしまう。園内にはその湯を使った足湯もある。国道をはさんで海側には鳥羽一郎の「北斗船」の歌碑。

25、静狩峠(面白度☆☆☆☆)

 長万部から海沿いのR37を行くと、静狩の集落を見下ろしながら静狩峠(静狩トンネル)を越える。この峠は中央分水嶺の峠なのだ。静狩峠ともうひとつの中央分水嶺の峠、礼文華峠(礼文華トンネル)までの短い区間は、太平洋スレスレなのにもかかわらず、その間の川は日本海に流れ出る。太平洋と日本海を分ける日本列島の中央分水嶺の線は北海道の宗谷岬から九州の佐多岬まできれいな1本の線になって延びているが、これほど片一方の海に片寄った中央分水嶺はない。

26、絵鞆(えとも)岬(絶景度☆☆☆☆☆)

 室蘭の絵鞆半島突端の岬。R37から室蘭港をまたぐ白鳥大橋(無料)を渡ると簡単に行ける。岬の展望台からの眺めがすごい。長々とつづく内浦湾(噴火湾)の海岸線を一望する。駒ヶ岳もよく見える。その下の砂崎と絵鞆岬を結ぶ線が内浦湾と太平洋の境目。さらに対岸の海岸線は恵山岬まで見える。恵山がいい目印になっている。これだけ長い海岸線を一望できるポイントは日本中探してもそうはない。

27、測量山(絶景度☆☆☆)

 絵鞆岬からの海沿いの道(一部ダート)はすごくいい。北海道屈指の重工業都市の室蘭が隣合っているとは思えないような断崖絶壁が連続し、その中に銀屏風、ハルカラモイ、ローソク岩などの名所が続く。最後に測量山(199m)。山頂までバイクで行かれるが、展望台からは室蘭と室蘭港を一望する。測量山からは室蘭の中心街へと下っていく。絵鞆岬から測量山までの間はあまり知られていないので、北海道ツーリングのとっておきの穴場的ルートといっていい。みなさん、ぜひとも走ってみて下さい。

28、地球岬(絶景度☆☆☆☆)

 絵鞆半島最南端の岬。展望台から見下ろす白亜の灯台と青い海の対比が強烈だ。北海道には白亜の灯台が少ないので、西日を浴びて色づいた灯台がひときわきれいに感じた。展望台の「地球広場」の直径は12・8m。地球の100万分の1のスケール。そこにはモザイク模様の世界地図が描かれているが、その中心は室蘭! 「地球岬」の語源はアイヌ語で断崖を意味するチキウからきているという。「チキウ」を「地球」にしたところに、ネーミングの絶妙のうまさを感じてしまう。その雄大な名前にひかれ、室蘭に来ると、ついつい足を延ばす。岬には名前にひかれ行ってみたくなるところが多分にある。

29、ポロト湖(面白度☆☆☆☆)

 周囲4kmの小さな湖だが「ポロト」は「大きな沼」を意味するという。湖畔にはアイヌ民族村の「ポロトコタン」(入園料750円)がある。「アイヌ民族博物館」で見たアイヌ料理の「オハウ」(汁)は興味深かった。山菜や乾燥させたウバユリ、魚、肉を入れて長時間、煮込んだもの。ここではアイヌの家(チセ)が見られる。民族衣装をまとった古老の話が聞けるし、イヨマンテ(熊祭)の歌が聞けるし、アイヌ特有の口に含むムックリの演奏も聞ける。ムックリの「ビヨーン、ビヨーン」という音はアイヌ人の悲しを感じさせて強くぼくの胸に響いた。

30、襟裳岬(絶景度☆☆☆☆☆)

 原始のにおいをとどめる日高山脈が北太平洋に落ち込むところが襟裳岬。岬周辺の台地に樹木は見られず、まるで敷きつめられたかのように笹が地面を這い、笹原の中にひと筋のアスファルトが延びている。岬の突端に立つと、さらに沖合まで岩礁が点々と続いてい。この岩礁地帯はゼニガタアザラシの生息地。襟裳岬は「風極の岬」だ。ここでは風速15mを超える日が年間200日を超え、風速3、40mの日も珍しくないという。この日も駐車場に停めたバイクが吹き飛ばされそうな強風だった。岬の「風の館」(入館料500円)では風速25mを体験できる。