賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

海道を行く(3) 北海道編

 (『ツーリングGO!GO!』2005年7月号 所収)

4月19日・4月20日 札幌→大成 走行距離427キロ

 札幌ドーム近くの「北海道ホンダ」でXR250モタードを借りると、すぐさま「北海道一周」に出発した。海岸線をメインルートとし、反時計回りで北海道を一周した。

 こだわりの第一歩は羊ヶ丘展望台。ここのレストランで「生ジンギスカン定食」を食べた。最高にうまい生ラム。これを皮切りに北海道中を食べまくった。カソリの「鉄の胃袋」を朝から晩までフル稼働させ、主だったものだけでも39品、食べたのだ。

 札幌からR5で小樽へ。そこでは朝里川温泉の「ゆらぎの湯」に入った。無色透明のやわらかな感触の湯。湯船の中では「さー、やるゾ!」とガッツポーズ。「温泉のカソリ」、朝里川温泉を第1湯目とし、体力勝負で全部で55湯の温泉を湯破(とうは)した。

 小樽に到着すると、中心街を走り抜け、石狩湾を一望する「絶景岬」の高島岬に立った。右手には雄冬岬、左手には積丹岬が見える。やがて日本海を赤々と染めて夕日が積丹半島の山々に落ちていく。感動的なシーン。

 この高島岬を第1番目とし、全部で31岬に立った。このように岬、温泉、食べ物に徹底的にこだわった「北海道一周」だった。

4月21日 大成→上磯 走行距離313キロ

 小樽から積丹半島に入り、第1夜目は『ゼロ円マップ北海道』を参考にし、R229沿いの「野塚野営場」にテントを張った。海岸のキャンプ場。だが、4月の北海道を甘くみていた。夜中の寒さは強烈で、ウエア全部を着込んでシュラフに入ったが、夜中にはあまりの寒さで何度も目がさめた。

 積丹岬、神威岬と積丹半島の両岬に立ち、R229を南下。北海道の荒々しい自然が牙をむいて襲いかかってきた。日本海から吹きつける風が次第に激しさを増していったのだ。弁慶像の建つ弁慶岬で強風はピーク。信じられないことだだったが、サイドスタンドを立てて停めたXR250モタードが吹き飛ばされた。こんなのは初めての経験だ。

 R229を走り出すと横風にあおられ、反対車線まで飛ばされた。対向車線には大型トラック。運転手はさぞかしビックリしたことだろう。反対側車線まで風に飛ばされただなんて、ぼくにとっては南米のパタゴニア縦断以来のこと。おまけに真っ黒な黒雲が押し寄せ、ザーッと雨が降ってくる。嵐のような天気。まだ明るいうちに貝取○温泉の国民宿舎「あわび山荘」に泊まった。翌日はウソのように穏やかな天気だった。

4月22日 上磯→富川 走行距離445キロ

 日本海を南下し、江差からはR228を走り、松前を通って「北海道最南端」の白神岬に立った。ここで日本海から津軽海峡へと海が変わる。函館では朝市を歩き、「朝市丼」を食べ、R278で本州への最短地点の汐首岬に立った。ここでも津軽海峡から太平洋へと海が変わる。

「北海道一周」での海の境目をさらにいえば、納沙布岬で太平洋からオホーツク海に、宗谷岬でオホーツク海から日本海へと変わる。岬は峠と同じように世界を分ける大きな境目になっている。別に海上に線が引かれているわけではないが、この境目をしっかり意識してバイクを走らせると、ツーリングはぐっと面白いものになる。

 苫小牧からはナイトラン。R235ではなんと吹雪に見舞われた。シールドに雪がこびりつき、前方がまったく見えず、やむなく裸眼で走った。4月下旬の目に突き刺さってくるような雪にたまらず、富川のビジネスホテルに飛び込んだ。

4月23日 富川→厚岸 走行距離455キロ

4月24日 厚岸→網走 走行距離447キロ

 まさに「地獄のあとの天国」で、襟裳岬も納沙布岬も快晴だった。「日本本土最東端」の納沙布岬からは北方領土の島々がよく見えた。一番近い貝殻島などは傾きかけた灯台が肉眼でもはっきり見えた。平べったい水晶島が水平線にベターッと張りつくようにして長く延びているのが目の底に焼きついた。国後島もよく見えた。雪をかぶった最高峰の爺爺岳(1822m)がポッカリと海面に浮かんでいる。

 こうして歯舞諸島や国後島を見ていると、「きっといつの日か、北方4島をバイクでまわってやるゾ!」という気持ちがムラムラッと沸き上がってくるのだ。

4月25日・4月26日 網走→増毛 走行距離620キロ

4月27日・4月28日 増毛→札幌 走行距離462キロ

「日本本土最北端」の宗谷岬ではミラクルを演じた。宗谷岬ではポツポツ、雨が降るような天気だったのにもかかわらず、宗谷海峡の水平線上には日の光が差し込め、サハリンがはっきりと見えたのだ。

 サハリン南部の山々にはまだかなりの雪が残っていた。宗谷岬からサハリンを見ると無性に宗谷海峡を越えてサハリンに渡りたくなってくるものだ。それはもう抑えられないような衝動。

 ぼくはその衝動にかられて1991年と2000年の2度、稚内港からバイクともどもサハリンに渡った。サハリンを走った感動も大きかったが、それ以上に宗谷海峡の船上から見る宗谷岬とオホーツクの海岸線の風景が目に残った。

 宗谷岬を離れがたく、岬の突端に一番近い民宿「清水」に泊まり、2階の窓から何度となくライトアップされた最北端の碑を見下ろした。

 翌朝は快晴。宗谷海峡にまっ赤な朝日が登り、大岬漁港を赤々と染めた。だが、水平線上にサハリンは見えなかった。宗谷岬から43キロのサハリンは、晴れれば見えるというものでもない。

 宗谷岬から日本海を南下し、小樽へ。その間では手塩川、石狩川という北海道の大河の河口に立った。「小樽→札幌」間では「峠越え」ルートを走り、4峠を越えた。こうして札幌に戻り、「北海道ホンダ」にXR250モタードを返したが、「北海道一周」の全走行距離は3169キロになった。

■カソリの北海道一周ガイド■ ⇒メチャクチャ長~いので別記事として立てます! この超絶な長さはコラムじゃないっ(by管理人)