賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

韓国食べ歩き:第30回

 (『あるくみるきく』1987年1月号 所収)

印象に残った食事は…

 ところで食べ歩いた韓国食を振り返ってみると、ひとつ、強く印象に残っている食事がある。それはソウルを出発する前に、市場の一角にある食堂で食べた朝食である。

 朝食の時間帯、その食堂のメニューはただ一種。ご飯と汁にキムチが1皿ついて出る。このシンプルな食事、つまり「一飯一汁一菜」こそ、韓国食の基本だと強く思った。

 ここで私が強調しておきたいのは、この「一菜」である。

 一菜といっても、文字通りに解釈してはいけない。韓国食の食べ歩きの中で、キムチの皿数の多さには何度となく驚かされたが、この一菜というのは、じつに多種多様なのである。

「一菜」をつくることに主婦は情熱を傾け、その味を自慢する。韓国では家庭のキムチを食べるだけで、その家の主婦の力量がわかるとさえ、いわれているほどなのだ。