韓国食べ歩き:第29回
(『あるくみるきく』1987年1月号 所収)
圧倒的に量の多い韓国食!
光州(クワンジュ)からソウルへの帰路も鉄道で。
特急「セマウル号」に乗った。「セマウル号」のゆったりしたシートにもたれかかり、車窓を流れていく風景に目をやりながら、私はあらためて韓国食の食べ歩きを思い返してみた。
わずか数日の旅でしかなかったのに、その数日間で体重が4キロも増えた。この20年あまり、体重の増減がほとんどなかった私なのだが…。
ずっしりと重くなった体で考え、こだわりつづけたのは、韓国食の圧倒的な量の多さであった。膳の上にずらりと並んだ皿数の多さと、1皿ごとの量の多さが、私の目の底に焼きついて離れないのだ。
私はふと、「南米一周」(1984年~1985年)のブラジルで食べたブラジル定食といってもいい「コメルシアル」を思い出した。
「コメルシアル」はご飯と豆汁の「アロス(米)・コン・フェジョン(豆)」が基本になっているが、そのほかにビフェ(ビーフステーキ)、スパゲティ、炒めたジャガイモ、ゆでたマンジョカ(キャッサバ)、油で揚げたプランタイン(料理用バナナ)、玉子焼き、サラダ…などの皿がテーブルにズラリと並び、私が食べたなかでは最高で13皿出た。
このブラジル食も韓国食と同じように、とてもではないが、全部は食べきれない。半分食べるのがやっとだった。
韓国とブラジルという、まったく関連のない食文化圏にある国どうしに、似たような食事の形態が出てくるのはどういうことなのだろうか。もしかしたら、私が韓国で驚かされた食事の量の多さというのは、驚くのに値いしないことなのかもしれない。韓定食やブラジル定食のような量の多い食事は世界的にみれば、けっこう一般的なことかもしれない。