日本列島岬めぐり:第15回 納沙布岬(のさっぷみさき・北海道)
(共同通信配信 1990年)
日本の数ある岬の中でも、東西南北端の岬というのは、特別に感慨深いものがある。
日本本土最東端の納沙布岬もそのひとつ。
根室半島突端の東経145度49分13秒の納沙布岬には根室から向かった。その途中には「返せ! 北方領土」の看板。同じような看板は日本の他地方でも見かけるが、根室で目にするその1文字1文字はぐっと現実味を増して迫ってくる。
根室半島を走り、歯舞の集落を抜け、根室から22キロで納沙布岬に到着。
「本土最東端の碑」前に立ったときは、思わず「やった!」のガッツポーズが飛び出す。「とうとう、ここまでやって来た!」という感慨だ。
明治5年に初点灯という北海道最古の納沙布灯台には霧信号、無線方位信号所が設置されている。この辺は「ガス」と呼ばれる海霧の多発地帯で、とくに6月から8月にかけては60日を超えるというほどで、納沙布岬は「海霧の岬」になっている。
灯台の下は岩礁地帯。その向こうの北太平洋とオホーツク海を分けるごようまい水道には、北方領土の島々が浮かんでいる。
一番右には秋勇留(あきゆり)島。目を左側に移していくと、手前にある萌茂尻(もえしり)島が重なって見え、その左手には勇留島が霞んで見えている。
納沙布岬からわずか3・7キロの貝殻島はケシ粒のような小さい島だが、北海の波風にさらされてコンクリートがはげ落ち、ボロボロになって傾いている灯台が見える。
その左手には志発(しぼ)島。目をこらしてやっと見える距離で、案内板によると25・5キロ、離れているという。そして水晶島へとつづく。まっ平な島で、水平線上にべたっと寝そべるようにして横たわっている。
北方領土のうち、これら歯舞諸島のあまりの近さには驚かされてしまう。
ところで納沙布岬は日本本土の最東端だが、日本の最東端というと、東経153度58分の南鳥島(旧マーカス島)。ミクロネシアに近い太平洋の孤島で、東京都の小笠原村に属している。日本は広い!