賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり(10) 大間崎(おおまざき・青森)

 (共同通信配信 1990年)

 本州最北端の大間崎には、下北半島の中心、むつ市の田名部から国道279号で向かった。津軽海峡に出ると大畑へ。イカ漁の基地になっている大畑漁港を見てまわりる。

 さらに国道279号を行き、海辺の峠、木野部峠を越え、下風呂温泉へ。そこでは2つの共同浴場、「新湯」「大湯」に入った。湯につかりながら地元の人たちの話を聞くのはいいものだ。ただ、下北弁がほとんどわからなかったが…。

 さっぱりした気分で大間崎へ。バイクで切る風の中にヒバの香りが漂う。風雪に強いヒバは下北の特産。この地方では建築材にふんだんに使われている。

 北緯41度31分30秒の大間崎に到着。

 岬の先端から津軽海峡を眺めた。目の前のクキド瀬戸を隔てて600メートルほど沖に浮かぶ弁天島には、大間崎の灯台が見える。その向こうの水平線上には、くっきりと北海道の山影が浮かんでいる。三角形の特徴のある山の姿は函館山だ。

 目を左に移せば、高野崎から龍飛崎にかけての津軽半島の海岸線を一望する。

 大間崎まで来ると、北海道が近い。対岸の汐首岬までは、わずか18キロでしかない。

 大間の町には函館の病院や商店の看板が目立って多いし、大間港からは函館行きのフェリーが出ている。所要時間は2時間ほどでしかなく、大間の人たちにとっては、青森に行くよりも、函館に行く方がはるかに近い。

 夕暮れが迫り、灯台に灯が入るころ、民宿「みさき荘」に泊まった。ここの夕食はすごかった。大盛のイカ刺、タラのフライ、ホタテの煮付け、ヒジキの煮物、サケ汁と、北海の幸ずくめだ。民宿のテレビから流れてくるニュース番組は北海道版だ。

 明治以前には、本州から北海道に渡るのは津軽半島の三厩港か、下北半島の大間港だった。本州最北端の岬、大間崎は昔からの北海道への玄関口になっていた。

バイク"曲がれる"大図解―これさえ... 根本 健