韓国食べ歩き:第12回
(『あるくみるきく』1987年1月号 所収)
夕食のキムチの皿数
東大門市場近くの大衆食堂で焼き魚とチゲ、カルビの夕食を食べたが、テーブルにズラリと並んだキムチの皿数の多さには驚かされた。数えてみると6種、あった。
それら6種のキムチというのは次のようなものである。
1、ムウトンチミ(ダイコンのムルキムチ)
2、ペチュトンチミ(ハクサイのムルキムチ)
以上の2種は水キムチ。ムルとは水の意味。これらムルキムチはダイコンやハクサイを薄い塩水に入れて乳酸発酵させたもので、さっぱりした味覚。匙ですくって飲むムルキムチの汁がうまい。
3、ペチュキムチ(ハクサイのキムチ)
4、オイキムチ(キューリのキムチ)
5、カクテキ(ダイコンの角切りキムチ)
6、プッキムチ(コマツナのキムチ)
これらのキムチは注文したわけではなく、いわば定食のような形でついてくる。
全部、食べられれば…、の話だが、おかわりは自由だ。このあたりは、日本の韓国料理店との大きな違いだ。
ペチュキムチ、オイキムチ、カクテキ、プッキムチはトウガラシをたっぷりと使って漬けたもの。そのほかトウガラシ粉、ニンニク、ショウガ、ネギ、セリなどを一緒に漬け込み、さらに塩辛類や松の実、牛肉なども漬け込んである。このように何種類もの味が混ざり合ったキムチは単なる漬物というよりも、より総合的な、より完成された食品ということができる。
キムチの種類は、まだまだある。そのほかの主なキムチを挙げてみよう。
・ポサムキムチ…ダイコンとナシ、ナツメ、クルミ、クリなどの果実類、アワビ、カキなどの貝類をハクサイで包み込んだもの。
・トンキムチ……ダイコンに切り口を入れ、トウガラシ、ニンニク、ショウガ、ワケギ、塩辛などをはさみ込んだもの。
・青菜のキムチにはカッキムチ(カラシナのキムチ)、プチュキムチ(ニラのキムチ)、バッキムチ(アサツキのキムチ)などがある。
韓国人の食生活とキムチは切っても切れないものだが、キムチの種類は全部、あわせると、50種類近くになるという。なぜ、韓国でこれほど多種のキムチが発達したのか、それを考えながらの韓国の旅になった。なぜなんだ…。