賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

甲武国境の山村、西原に「食」を訪ねて(その18)

 (『あるくみるきく』1986年10月号 所収)

シコクビエ(その1)

 西原で栽培されている雑穀には、そのほかにシコクビエがある。

 西原では「チョウセンピエ」と呼んでいるが、その周辺では各地で呼び名が違う。ゆずり原では「エゾビエ」、小菅では「サドビエ」、七保では「コウボウビエ」と呼んでいる。

 狭い地域で、なぜこうも呼び名が違うのか興味をひかれるところだが、残念ながら私にはいまだにその理由はわかっていない。

 シコクビエはアフリカのサバンナ地帯が原産地だが、アフリカ→インド亜大陸→東アジア→日本とつづく雑穀栽培地帯で見られる作物だ。とくにネパールでは主食に近い作物になっている。

 シコクビエはいったん粉にしてから食べる。

 収穫したシコクビエの穂は家の庭先で筵の上に広げて干すが、乾いた穂を槌でたたいて実を落とし、それをさらに干し、搗臼で搗いて精白する。それを碾臼でひいて粉にし、目の細かい「粉篩(こなぶるい)」でふるうと、シコクビエの粉ができあがる。

 粉を湯で練り固め、それを蒸籠で蒸して餅にしたり、その中に餡を入れて饅頭にする。