賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第28回 カシュガル→ナリン

 2006年9月14日、いつものように7時に起き、シャワーを浴びたあと、まだ暗いカシュガルの町を歩く。ナンをつくって売るナン屋が暗いうちから店をあけている。町を歩いている途中で夜明け。早朝のすがすがしい空気を吸いながらさらにカシュガルを歩いた。

 ホテルに戻ると8時、朝食。カシュガルを出発したのは10時過ぎ。市街地を走り抜け、北に向かってスズキDR-Z400Sを走らせると天山山脈の岩山群が見えてくる。

 天山南路のコルラで別れた天山山脈との再会! 左手に見える山並みはパミール高原になる。このあたりは天山山脈パミール高原がぶつかり合うところなのだ。

 カシュガルから60キロ走った村に中国側の国境事務所がある。そこで出国手続き。パスポートチェックは簡単に終わったが、バイクの手続きが長引いた。すべてのバイクの手続きが終わり、国境事務所を出発したのは3時間後。

 我々はじっと辛抱の3時間だったが、その間、「道祖神」の菊地さんは中国人スタッフとともに国境事務所内を駆け回ってくれた。出国手続きが終わったといっても、中国・キルギス国境のトルガルト峠まではまだ100キロ以上の距離がある。

 途中の村で昼食。カシュガルで用意したハンバーガーを食べ、国境のトルガルト峠に向かっていく。

 舗装路は途切れ、ダートに突入。そんなダートをモウモウと土煙を巻き上げて中国と中央アジアの国々を結ぶ大型トラックが走っている。大型トラックを追い抜くときが大変だ。前方はまったく見えない。

 不用意にその土煙のカーテンの中に飛び込み、万が一、対向車がやってきたらもう一巻のおしまいだ。逃げようがない。わずかに土煙が途切れた瞬間に前方を確認し、一気に大型トラックを抜き去っていく。

 トルガルト峠に向かってグングンと高度を上げる。前方の山並みの向こうはキルギス。17時15分、国境の村に到着。カシュガルから166キロの地点だ。

 その村から最後の登り。曲がりくねった峠道を登っているときにパンク。メカニックの小島さんがすばやくパンク修理をしてくれたが、そのあとの空気入れが大変。空気が薄いのでヒーヒーハーハーいってしまった。

 18時、カシュガルから172キロ地点、フェルガナ山脈のトルガルト峠に到達。標高3752メートルの峠だ。フェルガナ山脈は天山山脈パミール高原を結び付ける山脈。ここで天津港からずっと我々をサポートしてくれた達坂城旅行社の宋社長、通訳の蕃さんと別れた。1ヵ月近くも一緒だったので、なんとも辛い別れになった。

 トルガルト峠の国境線を越え、キルギス側に入ったところではキルギス側のスタッフが我々を待ち構えてくれていた。すべて「道祖神」の手配によるものだが、いつものことながら、このあたりの「道祖神」のネットワークのすごさには驚かされる。アジア大陸最奥の地といっていいトルガルト峠まで、サポート隊が出迎えに来てくれているのだ。

 トルガルト峠を下ったところがキルギス側の国境事務所。出入国を待つ荷物満載の大型トラックが長い列をつくっていた。キルギスの入国手続きが終わったのは日暮れ。ナリンの町に向かって走りだすとじきにナイトランになった。

 ナリンまでは200キロ近いダートがつづく。なんともきついナイトラン。夜道を走る農業用トラクターがまったく見えず、あやうく激突しそうになった。そんな危機一髪を乗り越え、ナリンの町に到着したのは2時15分。中国とキルギスの間には2時間の時差があるのでキルギス時間では24時15分。深夜の夕食を食べると、ベッドに倒れ込み、死んだように眠りこけた。

カシュガルのナン屋。朝早くからナンをつくっている
カシュガルのナン屋。朝早くからナンをつくっている

天山山脈の麓の小集落
天山山脈の麓の小集落

中国・キルギス国境のトルガルト峠への道
中国・キルギス国境のトルガルト峠への道

アジア大陸最奥の地でカソリ、「万歳!」ポーズ
アジア大陸最奥の地でカソリ、「万歳!」ポーズ