賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第4回 鵜ノ岬(うのみさき・茨城)

 (共同通信配信 1990年)

 どこを見ても、「HITACHI」一色の企業城下町の日立から、国道6号を北上して鵜ノ岬へ。

 断崖絶壁の岬の北側は伊師浜海岸。長い砂浜がつづく絶好の海水浴場になっている。季節は夏。海水浴場は大勢の人たちでにぎわっていた。駐車場で目についたのは県外車。「海なし県」の栃木、群馬や東京ナンバーが目についた。常磐道の日立北ICから車でわずか10分という交通の便利さのためだろう。

 そんな伊師浜海岸を見下ろす岬の断崖上の遊歩道を歩いた。太平洋の荒波が断崖に砕け、白く散っている。

 鵜ノ岬は名前通り、海鵜の飛来地。毎年、1羽ごとの許可証をもらい、「鵜捕り」がおこなわれている。トリモチをつけた竹ざおで海鵜を捕獲する。

 鵜飼の鵜について、岐阜(長良川)や大洲(肘川)の鵜匠に話を聞いたことがある。鵜飼には海鵜をつかうものと川鵜をつかうものがあるが、長良川、肘川ともに海鵜で、いずれも鵜ノ岬で捕獲されたものだ。

「海鵜は慣らすまでが大変。最初の1週間ぐらいは死んでも食べてやるもんか、といった態度なので、口をこじあけてエサを入れます。口はカミソリのようによく切れるので、うっかりすると指を食いちぎられてしまいますよ」

 鵜ノ岬の断崖に立って太平洋を見下ろしていると、そんな鵜匠たちの言葉が思い出されてくるのだった。

「鵜の目 鷹の目」「鵜のみにする」「鵜のまねする烏」

 などといわれるように、鵜の習性がことわざになっているほど、日本人にとって鵜は、なじみが深い。

 鵜ノ岬は日本の「鵜捕り」発祥の地なのである。