賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第3回 犬吠埼(いぬぼうざき)

 (共同通信配信 1990年)

「銚子ぱずれ」の犬吠埼に行く前に、刑部(ぎょうぶ)岬に立った。足元には飯岡の街並みが広がり、その向こうには九十九里の長い砂浜が果てしなく延びている。

 刑部岬から銚子半島に入っていく。半島最高所の愛宕山(74m)頂上にある地球展望台(地球の丸く見える丘展望台)からドーバーの「ホワイトクリフ」(白い断崖)と並び称される屏風ヶ浦を見下ろした。

 その後で犬吠埼に立った。

 太平洋の荒波が打ちつける高さ50メートルほどの海食崖の上には、白亜の灯台。岬と灯台は切っても切れない関係にあるが、「犬吠埼灯台」は高さ31メートルの、日本でも最も光度の強い一等灯台で、200万カンデラの光を太平洋に投げかける。

 灯台のてっぺんに登ると、君ヶ浜からその向こうの利根川河口、さらには銚子の街並みを一望できる。

 伝説によると、義経が奥州に逃げ落ちた際、この岬に立ち寄った。海岸に残された愛犬は主人を慕って七日七夜吠えつづけ、それで「犬吠」の名があるという。犬吠埼は義経伝説の地でもある。

 灯台の前には食堂や売店、ホテル、旅館が並んでいる。「おや?」と、私の目をひきつけたのは「日本最東端」をうたい文句にした看板だった。

 太平洋に突き出た犬吠埼は銚子半島の突端であり、さらには千葉県最東端、関東最東端の地ではあるが、日本最東端ではない。それをあえて「日本最東端」といいたくなるほど、「国のとっぱずれ」の犬吠埼には最果て感が強く漂っている。

 君ヶ浜の砂浜に座り込む。そこから眺める犬吠埼はすばらしい。まさに絵画の世界。岬が好んで絵に描かれるのがよくわかるし、大勢の人たちが岬に行くのがよくわかる風景だった。