賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第27回 カシュガル(その2)

 2006年9月13日、この日は一日、カシュガル滞在。その1日をフルに使って、「シルクロード軍団」のメンバー、斉藤さん、石井さんと一緒にタクシーをチャーターし、パミール高原のカラクリ湖まで行くことにした。以前、行ったことのある斉藤さんから、そのすばらしさを聞いてのタクシーツアーだ。

 7時、起床。外はまだ真っ暗。7時30分、ホテルのレストランで朝食。

 8時にタクシーがやってくる。胸をはずませてタクシーに乗り込む。カシュガルの市街地を走り抜け、郊外に出たところで夜明けを迎えた。

 タクシーは、パキスタンとの国境のクンジェラブ峠へとつづく2車線のハイウエイを、時速100キロ以上の速度で突っ走る。タリム川の上流、カシュガル川を渡る。この道は天山南路の国道314号。天山山脈南麓のコルラからクチャ、アクスと通ってカシュガルへ、カシュガルからパキスタン国境のクンジェラブ峠に通じている。

 カシュガル郊外のオアシス群が尽きると、砂漠地帯に突入する。

 やがて前方にはパミール高原の山並みが見えてくる。「世界の屋根」といわれるパミール高原。この一大山塊を中心に北には天山山脈、南にはカラコルム山脈、さらにはヒンズークッシュ山脈と世界の大山脈が連なる。

 国道314号は谷間に入ると、ヤルカンド川沿いの道になる。岩山の間を縫って流れるヤルカンド川の川面は朝日を浴びてピンク色に輝く。道は谷間に入っても2車線の舗装路。ついひと昔前までは悪路で知られたクンジェラブ峠への道は大きく様変わりした。

 ところどころで小さな集落をみかける。牧畜民のパオも見る。谷間の草地ではヤクが放牧されている。

 カシュガルを出てから3時間ほどで前方に雪山が見えてきた。標高7719メートルのゴングール峰だ。

 谷間を抜け出るとパミール高原の神秘の湖、カラクリ湖が目の中に飛び込んでくる。なんという光景。カラクリ湖の北側にはゴングール峰の雪の峰々が連なり、その影が湖面に映っている。反対側の南側には標高7546メートルのムスターグアタ山。大きなどっしりとした雪山だ。カラクリ湖畔から眺めるパミール高原の7000メートル級の雪山の姿は目の底に焼きついた。

 タクシーツアーでは残念ながらカラクリ湖で折り返したが、次の機会にはぜひともバイクで標高4943メートルのクンジェラブ峠を越えてパキスタンに入り、ギルギットからラワルピンディー、ラホールと通り、アラビア海に面したカラチまで、「走ってみたい!」と思うのだった。

 カラクリ湖からの帰路ではパミール高原の山中にある温泉に立ち寄った。

 入浴料は1人20元(約300円)。無色透明無味無臭の湯がふんだんにバスタブに流れ込んでいる。まさかパミール高原で温泉に入れるとは思ってもみなかったので「温泉のカソリ」、もう大感激。こうして夕方、カシュガルに戻った。

 タクシーのチャーター代は400元。我々は1人2000円ほどでパミール高原を存分に味わうことができた。その夜はレストランで夕食を食べながらウイグル族の女性たちの唄を聞き、ダンスを見た。こうして中国最後の夜は更けていった。

パミール高原の岩山地帯に入っていく国道314号で
パミール高原の岩山地帯に入っていく国道314号で

カラクリ湖越しにムスタークアタ山を眺める
ラクリ湖越しにムスタークアタ山を眺める

パミール高原の山中の温泉
パミール高原の山中の温泉

パミール高原の温泉につかる斉藤さん(手前)と石井さん
パミール高原の温泉につかる斉藤さん(手前)と石井さん