賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

(11)「オーストラリア2周7万2000キロ」(1996年)の「熊クミさん」

 オーストラリア中央部の中心地アリススプリングに着くと、「アリスロッジ」というバックパッカーズに泊まったが、ここは男女同室。隣のベッドにはデンマーク人の女の子。彼女はスケスケルックで、ピンクの下着が透けて見えてしまう。刺激が強すぎるよ‥‥。

 夕暮れのアリススプリングの町を歩いていると、「カソリさーん」と声をかけられた。日本人ライダーのXT350に乗る「隊長」と、DR650に乗る「DRタカハシ」との出会いだ。

「一緒にバーベキューをしましょうよ!」

 と、2人に誘われ、さっそくスーパーマーケットのウールワースでビーフやチキン、ソーセージ、野菜類、それとビールを買い、彼らの泊まっているバックパッカーズ「メラルーカ」に行き、そこでバーベキューパーティーがはじまった。

 我々3人にほかに、「メラルーカ」に泊まっていた熊本の女子大生の久美子さん、「熊クミさん」もメンバーに加わってくれた。彼女は1年間、大学を休学し、ワーホリ(ワーキング・ホリデー)でオーストラリアにやってきた。列車、バスを乗り継いでまわっている。

「熊クミさん」は明るい性格で、彼女がいるだけでその場の空気は明るくなり、華やいだ。

 VBのカンビールをガンガン飲み、肉を腹いっぱいに食べながら、話はいやがうえにも盛り上がる。

「オレの前の彼女はカソリさんの大ファンだったんですよ。あるとき、オレとカソリさんのどっちが好きかって聞いたらカソリさんだって‥‥。あのときは、どこかでカソリさんに会ったら、首をギューッと締めてやろうと思ったくらいですよ。そのカソリさんに、アリススプリングで会うだなんて‥‥」

 そんな「DRタカハシ」の話に、「熊クミさん」は、やんやの喝采。

「今がチャンス。カソリさんの首を締めちゃえ、締めちゃえ!」

 と、「DRタカハシ」をけしかける。いやはやいやはや。「熊クミさん」のひと声で、あやうく首を締められるところだった。なんとも楽しいみなさんとのバーベキューパーティーは、夜中までつづいた。

 翌朝は、「アリスロッジ」を出発すると「メラルーカ」へ。

 前夜のメンバーと、今度は「おにぎりパーティー」をすることになっているのだ。「熊クミさん」は夜中まで大宴会がつづき、大騒ぎしたにもかかわらず、朝早くに起き、ご飯を炊いて、たくさんのおにぎりを握って待っていてくれていた。

「熊クミさん」の心づかいに胸が熱くなる。彼女の握ったおにぎりはとびきりのうまさ。そんな朝食のおにぎりをパクつきながら、またひとしきりに話に花を咲かせた。昨夜のつづきのようなモードで我々は大笑いの連続。「熊クミさん」のにこやかな笑顔が目に残る。「おにぎりパーティー」が終ったところで、みなさんの見送りを受け、南のアデレードに向かって走り出すのだった。