六大陸食紀行:第5回 南米・アマゾン
(共同通信配信 1998年~1999年)
ブラジルのアマゾン川流域のセルバを行く。セルバとは大密林地帯。高木が空を突き、密林の中は“昼なお暗い”世界。樹海という言葉がぴったりだ。その樹海を伐り開き、シャシだけの専用トラックが原木を運び出している。
街道沿いにはガソリンスタンドや食堂ができ、牧場や農場ができ、小さな町もできている。アマゾン開発の最前線といった光景を見せている。
とある町に着いたところで食堂に入り、昼食にする。定食を注文したが、テーブルにはズラズラッと料理の皿が並ぶ。数えてみると、全部で10皿もあった。
ご飯、豆汁、ビフテキ、チキン、赤カブ、野菜の煮物、サラダ、スパゲッティ、それとゆでたマンジョーカとファリーニャの10皿だった。
これらの料理をとり皿にとって食べるのだが、“大食いカソリ”をもってしても、とてもではないが全部は食べきれない。ところがまわりのブラジル人を見ると、きれいに食べつくしている。ブラジルは南米大陸の半分近くを占める大国だが、この食事ひとつをとってもわかるように、たいへんな食料大国だ。
ところでマンジョーカというのは、アンデス編や西アフリカ編に登場したキャッサバのこと。ファリーニャはマンジョーカの澱粉を炒ってつくる顆粒状の粉で、ブラジル料理には欠かせない。
キャッサバの原産地はアマゾン流域の低地。今でもこの地方では一番重要な作物になっている。セルバを伐り開いて焼いた焼畑では必ずトウダイグサ科灌木のキャッサバが栽培されている。キャッサバのイモには無毒と、青酸性の強い毒を持つ有毒の2種あるが、有毒のキャッサバがより多くつくられ、それは毒抜きされて初めて食用になる。
ジャガイモがヨーロッパに伝播して急速に広まったように、このキャッサバも16世紀に西アフリカに伝わると、またたくまに広まり、東西アフリカの主食用作物の座についた。このあたりが南米原産の作物のすごさであり、おもしろいところだ。