賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第6回 西安→平涼

 2006年8月28日、いよいよバイクでの西安出発の朝を迎えた。6時、朝食。7時、出発。それに先立って、出発のセレモニー。「目指せ、イスタンブール!」の掛け声とともに、全員で「エイエイオ-」と気合を入れた。あいにくの空模様で雨具を着て走り出す。

 西安はなにしろ大都市なので、うまくこの町を走り抜けられるかどうかが大きな問題。中国人スタッフの乗った車が先に走り、その後ろに15台のバイクがつづく。カソリが先頭を走り、右折時や左折時にはカソリの次のバイクがその地点で止まって後続車に指示を出す。一番後を「道祖神」の車のハイエースがつく。それには菊地さんやメカニックの小島さんらがのっている。トラブルもなく西安の郊外まで来られたときはホッとした。まずは最初の難関を突破。

 シルクロード起点碑でバイクを停め、ラクダの隊商をモチーフにした石造りのモニュメントを見る。先頭のラクダをひく人物像がメンバーの1人の斉藤さんによく似ている。「ほんとだ、ほんとだ」と驚きの声。そんなシルクロードのモニュメントを離れ、ほんとうの西安出発となった。

 西安からは国道312号を行く。ぼくのバイクはスズキDR-Z400S。我が愛車のDRはすごいバイクで、2002年にはシベリア横断ルートでの「ユーラシア大陸横断」、2004年~2005年には「チュニス→アクラ」での「サハラ砂漠縦断」をノントラブルで走り抜いてくれた。西安を走り出してまもなく、メーターは5万キロを越えた。

 ところで西安からの国道312号は上海が起点。南京、鄭州を通って西安へ。西安からは蘭州、玉門、ハミ、トルファン、ウルムチと通ってカザフスタン国境が終点になっている。そのうち西安からトルファンまでが我々の通るルート。国道312号は全長4552キロで中国の国道の中では第2位の長さになる。ちなみに中国の最長国道は上海→武漢→成都→ラサ→ネパール国境の国道318号で全長5334キロ。さすが広大な国土の中国だけあって、国道の長さも日本とは桁違いだ。

 中国の国道というのはそれほど本数は多くない。101号から112号までの100番台の12本は北京から放射状に出る国道、201号から228号までの200番台の28本は中国を南北に縦断する国道、そして301号から330号までの30本は中国を東西に横断する国道で、全部で70ルートになる。

 永寿を通り、長武で昼食。町の食堂で「焼きうどん」を食べる。ここでは調理場で麺をつくるところを見せてもらった。汁なしのうどんだ。長武を過ぎると、甘肅省に入っていく。第1日目は297キロ走った平涼で泊まる。我々の宿の「明珠賓館」に入ると、シャワーを浴びて着替え、さっそく町を歩いた。

 平涼駅まで歩き、ホテルに戻ってくるころには10連発もの猛烈なクシャミに見舞われた。クシャミのあとは滝のように流れ出る鼻水。黄砂の舞う中を走ってきたので、最初は花粉症と同じような黄砂のアレルギーではないかと思ったほど。ところがこれが我々を悩ませた「中国風邪」のはじまり。このあとは息がつまるほどの鼻づまり、激しいせき「中国風邪」にはさんざん痛めつけられるのだった。

シルクロード起点のモニュメント
シルクロード起点のモニュメント

長武の食堂
長武の食堂

平涼で泊まったホテル「明珠賓館」
平涼で泊まったホテル「明珠賓館」

平涼の路地裏から見るモスク
平涼の路地裏から見るモスク