賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第5回 西安

 シルクロードの起点、西安は1日かけてまわった。まずはシルクロ-ドの出入り口、「西の城門」。西安の城壁は全長13キロ。この城壁に囲まれた内側が昔の長安の都の中心になる。現在は城壁の外側にも市街地が広がっているが、城壁内は「城区」、城壁外は「郊区」と呼び分けられている。城壁の上はかなりの道幅で、歩いてまわれるようになっている。「西の城門」に掲げられている「シルクロード図」はぼくの目を引いた。

 次に「大雁塔」に行く。慈恩寺という寺の7層の仏塔で、高さ64メ-トルという壮大なもの。西安のシンボルになっている。「西遊記」で名高い玄奘三蔵が印度(インド)から持ちかえった膨大な仏典を保存するために建てた塔。ここには三蔵法師の像が建っている。「大雁塔」に対して「小雁塔」と呼ばれる塔もある。大薦福寺にある仏塔。この寺は中国史上唯一の女帝、武則天(則天武后)が亡き夫の高宗のために684年に建立した大献福寺で、それがのちの大薦福寺に改称された。

「西の城門」と「大雁塔」を見たところで、町中の食堂で昼食にする。ここでは汁のほとんどない「岐山干拌麺」を食べた。そのあとでもう1種、幅広の麺も食べた。ぼくは「シルクロード」は「麺ロード」だと思っている。で、「シルクロード横断」では、できるだけ多くの麺を食べてみたいのだ。さすが「麺大国」の中国だけあって、多種多様な麺がある。それを1種でも多く食べるのはこの上もない楽しみだ。

 昼食の麺を食べたあと、西安駅に行く。ぼくは駅に行くのがすごく好き。バイクでのツーリングでもよく駅を使う。たとえば「東京→青森」のゴールを青森駅前にするような感じで、ツーリングの途中では各地の駅に立ち寄っている。

 西安駅の構内には大勢の人、人、人…。駅前にも大勢の人たちを見る。鉄道がいかに重要な交通手段になっているか、それがよくわかる光景。チベットのラサに通じる鉄道が開通間近で、その切符を売る窓口の前にも長い列ができていた。

 次に清真大寺へ。一見すると仏教風の寺に見えるが、ここはイスラム教のモスク(寺院)。唐代の742年に創建された。この清真大寺の周辺にはイスラム教徒が多く住んでいるが、彼らは頭に白い小さな帽子をのせている。大半の食堂には「清真」の2文字が表示されている。「清真」は「ここはイスラム料理の店ですよ」の意味。イスラム教徒は豚肉を食べないので、「清真」の店の肉といえば主に羊肉になる。12元(180円)の拝観料を払って清真大寺に入っていく。楼閣にはアラビア文字。西安がシルクロードで西のアラビアの世界と深く結びついていたことを実感させる清真大寺だった。

 つづいて「歴史博物館」を見学。ここでの展示は紀元前21世紀から紀元前770年までつづいたという周の歴史からはじまる。そして秦、漢、隋、唐、宋、元、明、清と中国歴代の王朝の展示へとつづいている。中国4000年の歴史をぐるりとひとまわりしながら見ていける博物館。それにしても中国の歴史の長さには圧倒されてしまう。最後に「小雁塔」に行き、塔の上まで登り、そこから西安を見下ろした。

 我々のホテル「東方酒店」に戻ると、明日のバイクでの出発にそなえ、ホテル近くの「中国石油」で給油。15台のバイクを連ねての給油は壮観だ。いよいよ明日は西安から西へと走り出す。その夜はホテルのレストランで「羊肉灌湯包」の夕食。我々メンバーはいつになく興奮した面持ちでビールで乾杯。そのあとビールやワインを飲みながら夕食を食べるのだった。

西安の「西の城門」
西安の「西の城門」

「西の城門」から西を見る
「西の城門」から西を見る

昼食で食べた「岐山干拌麺」
昼食で食べた「岐山干拌麺」

西安駅前の雑踏
西安駅前の雑踏