賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの新・峠越え:神奈川(20)六国峠(ろっこくとうげ)その2

 江ノ島で昼食を食べ、出発したのは12時ちょうど。国道134号で鎌倉に向かっていく。国道467号との分岐を過ぎると藤沢市から鎌倉市に入る。海岸は片瀬海岸から腰越海岸に変わる。そこには小さな腰越漁港がある。江ノ電腰越駅近くには「小動(こゆるぎ)」の信号。右手の海の落ち込む岬が小動岬で、そこには小動神社がある。小動岬を通り過ぎて鎌倉に入っていく。

 国道134号は江ノ島までは快走ルートだったが、江ノ島を過ぎると、片側1車線になるので慢性的な渋滞ルート。そこはバイクの強みで、大渋滞をすり抜けていく。右手に七里ヶ浜の海岸、左手に江ノ電を見ながら走り、もうひとつの岬、稲村ヶ崎を通り過ぎる。右手の海岸は由比ヶ浜。そして滑川の交差点を左折する。この交差点で相模湾に流れ出る川が鎌倉の中心部を流れる滑川だ。

 滑川の交差点からは県道21号で鎌倉駅前を通り、鶴岡八幡宮へ。幅広のこの道が「若宮大路」。由比ヶ浜の一の鳥居から二の鳥居、三の鳥居と3つの鳥居がある。源頼朝は2人目の子の出産を前にした着帯の儀のとき、安産祈願のために鶴岡八幡宮の社前から由比ヶ浜までの道を幅広の直線路にし、新たな参詣路をつくった。それが若宮大路なのだという。まずは鶴岡八幡宮を参拝。ここは昔も今も鎌倉の中心だ。

 鶴岡八幡宮の参拝を終えるといよいよ六国峠へ。鶴岡八幡宮前で道はT字路になるが、鎌倉駅の方からみて左に行く道が巨福呂(こぶくろ)坂を越える県道21号、右に行く道が滑川沿いに走り、朝比奈峠を越える県道204号になる。六国峠は右へ、県道204号を行く。

 鶴岡八幡宮を過ぎてほどなく「岐れ路」の交差点。道は2又になっているが、そこを左へ。鎌倉宮から瑞泉寺への道に入っていく。道は護良親王が幽閉された土牢で知られる鎌倉宮の前を通り、水仙で有名な寺瑞泉寺で行き止まりになる。拝観料の100円を払って瑞泉寺の境内を歩いた。自然をたくみに取り入れた庭園が見事だ。平日にもかかわらず、ここの庭園を見に、けっこうな人たちが瑞泉寺に来ていた。

 バイクを駐車場に停め、瑞泉寺から六国峠に通じている「天園ハイキングコース」を歩く。すぐ近くに鎌倉の市街地があるとは思えないような豊かな自然の中をいくハイキングコース。山道を登り、尾根道に出る。起伏のある尾根道。このあたりは天台山から大平山へとつづく山並みで、鎌倉をとり囲む山並みの中では一番、高い。鎌倉の深山を行くという趣がある。鎌倉の秘境を行くという感じすらする六国峠への山道。このように六国峠は歩いてしか行けない峠なのだ。

 瑞泉寺から1時間ほど歩いて六国峠に到達。六国峠は6つの国が見えるのでついた峠名だが、その6ヵ国というのは相模、武蔵、伊豆、上総、下総、安房(もしくは駿河)だという。今でも6ヵ国全部が見える日があるのだろうか…。鎌倉をとり囲む山並みの落ちた先に鎌倉の市街地を望む。その向こうには相模湾にストンと落ちる稲村ヶ崎。じつに目立つ岬だ。

 六国峠から見下ろす鎌倉というのは、想像していた以上に、海まで迫る山並みに囲まれた町ということだった。何重にもなって囲まれている。そんな六国峠からの風景を眺めながら、峠の茶屋でおでんを食べた。

 六国峠からの眺めをしっかりと目に焼き付けたところで来た道を引き返し、瑞泉寺の駐車場に戻った。瑞泉寺から六国峠までの往復は1時間40分。鎌倉からは国道134号で平塚へ、そして夕方には伊勢原に戻った。江ノ島、鎌倉を満喫した全行程74キロのワンデーツーリングだった。

瑞泉寺の参道
瑞泉寺の参道

六国峠からの眺め
六国峠からの眺め

六国峠(天園)の峠茶屋
六国峠(天園)の峠茶屋

六国峠のおでん
六国峠のおでん