賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの新・峠越え:神奈川(19)六国峠(ろっこくとうげ)その1

 鎌倉の峠越えだ。

 1192年に源頼朝がこの地に幕府を開いて以来、1333年に北条氏が滅亡するまでの140年間というもの、鎌倉は日本の中心だった。相模湾に面した鎌倉はまさに難攻不落の地で、三方を山々に囲まれている。その鎌倉をとり巻く山並みにはいくつかの峠があるが、そのうちのひとつ、六国峠に行ってみようと思った。

 ということで2006年6月29日午前9時、伊勢原を出発。スズキDR-Z400Sを走らせ、「いざ、鎌倉へ!」ではないが、鎌倉へ、鎌倉へと向かっていく。平塚からは海沿いの国道134号を快走。相模川を渡り、茅ヶ崎から藤沢へ。国道134号は4車線化の工事が進み、さらなる快走ルートになっているので、我が家から26キロの江ノ島には9時45分に到着だ。

 国道134号を走ると、いつも江ノ島は素通りしてしまうが、鎌倉に行く前にキチンと江ノ島を見てみようという気になった。思い立ったが吉日。江ノ島入口の交差点を右折し、江ノ島大橋を渡る。江ノ島大橋は車道だが、そのわきの歩行者用の橋は弁天橋。江ノ島に入るとDRを停め、島を歩いた。

 江ノ島はよく知られた観光地なので、我々ライダーはなんとなく敬遠するところがあるが、バイクを降りて歩いてみるとけっこうおもしろい島なのだ。島にはほとんど平地はなく、起伏に富んでいるので歩きごたえもある。さらに積み重なった歴史が、周囲4キロの小島、江ノ島をよけいにおもしろくしている。

 江ノ島は昔からの信仰の島。青銅の鳥居をくぐり抜け、江島(えのしま)神社の参道を歩く。江ノ島江島神社門前町。狭い参道の両側には土産物屋や食堂、旅館などが軒を連ねる。朱塗りの鳥居をくぐり、瑞心門をくぐり抜け、石段を登ると辺津(へつ)宮。江島神社は3宮から成っているが、辺津宮(下ノ宮)はその中心的存在。権現造りの社殿が美しい。まずは辺津宮に参拝したあと、隣合った弁天堂(拝観料150円)の裸弁天を見る。ちょっとなまめかしいお姿。江ノ島の裸弁天といえば、まさに江ノ島のシンボルで、琵琶湖・竹生島の弁天、安芸・宮島の弁天とともに「日本三弁天」のひとつに数えられている。

 辺津宮から石段を登っていくと次に上ノ宮の中津宮に出る。朱塗りのお宮が色鮮やか。そこからさらに登ると展望灯台の前に出る。そこまで登り坂がつづく。かなり急な登りなのでずいぶんと汗をかいている。エレベーターで展望灯台(入場料500円)の展望台に登る。江ノ島をとり巻く360度の眺望を楽しめる。足元には江ノ島大橋と弁天橋を見下ろし、対岸の片瀬には高層ビルが林立している。右手には長い砂浜の片瀬海岸。その先には小動(こゆるぎ)岬。その岬を過ぎると鎌倉で、さらにその先に突き出た岬が稲村ヶ崎稲村ヶ崎の向こうが鎌倉の心臓部になる。

 展望灯台から奥津宮(本宮)へ。このあたりまで来ると、ひっそりと静まりかえっている。奥津宮を過ぎると急な石段を下り、海食洞の岩屋(入洞料500円)へ。この岩屋は江島神社の奥宮になる。岩屋に入るとひんやりとした空気。第1岩屋、第2岩屋とあるが、第2岩屋の一番奥には龍をまつっている。緑色をした龍の金色の目が怖いくらいに迫力があった。

 そこを最後に来た道を引き返し、参道入口の店で江ノ島名物の「シラス丼」を食べた。丼飯には釜あげシラスと小エビがのっている。こうして江ノ島を存分に楽しんだところで国道134号で鎌倉に向かった。

(六国峠その2に続く)

江島神社の青銅の鳥居
江島神社の青銅の鳥居

辺津宮
辺津宮

岩屋
岩屋

江ノ島名物のシラス丼
江ノ島名物のシラス丼