賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの新・峠越え:神奈川(14)秦野峠(はだのとうげ)

 2006年の梅雨の最中。新・峠越えはつづく。この年の梅雨はラッキーなことに、一面ベターッと雨雲が覆うような梅雨空でも、それほど雨は降らない。雨がシトシト降る中を走り出すのは辛いものがあるが、雨さえ降っていなければ、「それ行けー!」という気分になるものだ。

 ということで6月22日、午前中は天気がもちそうだなと判断を下し、午前9時に出発。目指すのは秦野峠だ。秦野峠の登り口は中山峠(神奈川-11参照)、尺里峠(神奈川-12参照)と同じ寄(やどりぎ)。このところ毎日のように「寄通い」をしている。

 スズキDR-Z400Sを走らせ、伊勢原の自宅から国道246号を西へ。我が家から寄入口の交差点までは19キロ。30分もかからずに走っていける。交差点の角にあるセブンイレブンで缶コーヒーを飲み、ひと息入れて寄へ。中津川沿いの寄のいくつかの集落を走り抜け、尺里峠への分岐、中山峠への分岐も通りすぎ、丹沢の奥深くへと入っていく。

 寄の最奥の集落は稲郷。そこから1キロほどで分岐。直進する道は雨山(あめやま)峠方向に延びる宇津茂林道だが、ゲートで通行止め。その地点から雨山峠までは4・2キロの表示。今度、いつか雨山峠までは歩いていってみよう。その一帯は「やどりぎ水源林」。森林内には周遊歩道がある。

 秦野峠への道はその分岐を左折し、寄大橋を渡っていく。ところが橋を渡ってすぐのところ、100メートルも走らない地点にゲート。かなり期待してここまで来たのだが、残念ながら秦野峠林道も通行止めになっている。そこには詳細な「秦野峠林道」の案内図が出ている。秦野峠を越えると、八丁の奥の皆瀬川の源流地帯に下り、そこからもうひとつの峠、ブッシェ峠を越えて丹沢湖の湖畔に下っていく。秦野峠を越えられないのならば、反対側にまわって、反対側のゲートまで行ってみようという気になった。

 来た道を引き返すのも芸がないので、別ルートで国道246号に出ようと、その分岐点近くから三廻部(みくるべ)林道に入っていく。中山峠の北の名無し峠を越える舗装林道だ。ところがこの三廻部林道もゲートで通行止め。丹沢の林道群というのは、このように絶対にバイクのすり抜けをも許さないというガチガチのゲートだらけだ。しかたなく来た道を引き返し、もう一度、寄を走り抜け、国道246号に出た。そこから山北を通り、中川温泉から犬越路に通じる県道76号に入っていった。

 三保ダムの手前で県道76号と分かれ、丹沢湖沿いに県道710号を走る。丹沢湖が尽きるあたりに「丹沢湖ビジターセンター」(入館無料)がある。そのわきから入っていく道が秦野峠を越える秦野峠林道。

 湖畔を離れ一気に山中を登っていく。しかし、「丹沢湖ビジターセンター」から1・4キロ地点にゲート…。そこからスゴスゴと戻るのだった。

 丹沢の自然を紹介する「丹沢湖ビジターセンター」を見学したあと、最後に玄倉林道を走る。県道710号はそのまま玄倉林道につづいている。舗装が途切れ、ダートに突入。秦野峠を越えられなかった腹立たしさもあり、路面の水溜まりは避けずにそのまま突っ込み、盛大な水しぶきを巻き上げながら走った。玄倉川沿いに丹沢山中の奥深く、塔ノ岳近くまで延びている玄倉林道だが、「丹沢湖ビジターセンター」から3・1キロの地点にゲートがあってそこから戻らなくてはならなかった。林道の行き止まり地点までは自由に走れたころがなつかしい。

 秦野峠はまだぼくの越えていない峠なので、なんとしても越えてみたい。

「たとえば1年に1度とか2度、林道開放日があってもいいのではないか…」

「だけど、事故を考えると、林道管理者としてはそうもいかないのだろうなあ…」

 そんなことを考えながら丹沢湖をあとにし、国道246号に出、伊勢原に戻った。

寄にやってきた!
寄にやってきた!

秦野峠林道の寄側
野峠林道の寄側

秦野峠林道の玄倉側
野峠林道の玄倉側

秦野峠林道のゲート
野峠林道のゲート