賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

アフリカ縦断2013-2014(その29)

「ナイロビ→ケープタウン編」(29)

 1月10日。夜明けとともに起きると、キャンプ場内のトレッキングコースを40分ほど歩いて岩山の頂上に立った。そこからは岩峰群の向こうに広がる大平原を一望。すごい眺めだ。やがてキャンプ場をぐるりと取り巻く岩山の端から朝日が昇った。岩山の頂上からは急ぎ足で下り、朝食に間に合わせた。

 いつものマヨパン&紅茶の朝食を食べ、ピーターとレナタのカップルには「ケープタウンでまた会いましょう~!」といって別れ、アラスのキャンプ場「クレインアラスビスタ」を出発。キートマンスホープに通じる幹線道路を行く。

 アラスから100キロ走ったゴアゲブの町で給油する予定だったが、町は廃れ、ガソリンスタンドも廃墟同然になっていた。

 さー、困った。

 ここで道祖神の吉岡さんが取った手は、ゴアゲブで分岐する道を北に40キロほど行ったバサニエで給油するというもの。サポートカーだけが行ってジェリカンを満タンにし、我々バイク部隊はどこか日蔭を見つけて車を待つことにした。

 ところがキートマンスホープへの幹線道路を東に向かって走ったが、行けども行けども木一本、はえていない。日蔭はまったくないのだ。

 もはやここまでと、仕方なく道路沿いの空き地にバイクを止め、そこで車を待つことにした。頭上にはギラギラ照りつける太陽。一片の雲もない。頭がクラクラしてくる。そんな灼熱の太陽の元でみなさんは各自それぞれの方法で休憩をとった。

 旅に出てからひげを伸ばし始めた伊藤さんは、バックミラーを見ながらひげのお手入れ。最年長の榛澤さんは、まるで灼熱の砂漠を楽しむかのように裸になって日光浴している。いやー、お元気だ。女性ライダーの平本さんはセローの作り出すわずかばかりに日蔭で横になっている。もうすっかり「アフリカ縦断旅」になじんでいるみなさんだ。

 こうして4、50分待ち、サポートカーがやってきたところで再度の出発となった。

 アラスから180キロ走ったシーヘイムでキートマンスホープに通じる2車線の幹線道路を右折し、世界でも最大級の大峡谷、フィッシュリバーキャニオンに向かう。

 フィッシュリバーキャニオンへの道は幅広の高速ダート。土煙をモウモウと巻き上げて走る。道路に沿って大西洋の港町リューデリッツと南アフリカを結ぶ鉄道が通っている。昼食の時間になっても我々は日蔭を見つけられず、この鉄路を使った。

 鉄道の橋脚の下にもぐり込み、枯れ川の砂の上にシートを広げ、頭を橋にぶつけないようにして昼食にした。パンと缶詰。食べ終わると、すばやく15分間の昼寝をした。すべてを焼き尽くすような灼熱の砂漠でも、こうして太陽光線さえ遮れば、けっこう快適にすごせるのだ。

 シーヘイムからダートを130キロ走り、フィッシュリバーキャニオンに近い「ホバスキャンピングサイト」に到着。広々としたきれいなキャンプ場だ。

 各自、テントを張り終えると、バイクを連ねてフィッシュリバーキャニオンに行く。

 10キロほどのダートを走り、パックリと口をあけた大峡谷を一望した。峡谷の深さは550メートル。壮大な眺めだ。

 曲がりくねって流れるフィッシュ川がはるか下の方に小さく見えている。砂漠の中を流れる川なので水量は少なかったが、いったん洪水になると大量の水が流れ下るという。削りとられた岩山に緑はほとんど見られない。

 フィッシュリバーキャニオンの全長は160キロ。アメリカのグランドキャニオンに次ぐ世界第2位の大峡谷だといわれている。

 我々は展望台から両方向に延びるダートを走り、夕日に染まるフィッシュリバーキャニオンをバックに記念撮影した。

 キャンプ場に戻ると、「世界一周」中の日本人チャリダーの伊藤さんに出会った。伊藤さんは福島出身で、5年近くをかけての「世界一周」。これからケープタウンに向かっていくという。夕食の席に伊藤さんを招き、ライス&シチューの夕食を一緒に食べた。

 道祖神の吉岡さんは同じ自転車での「世界一周」ということで、伊藤さんとの「世界一周」談義で盛り上がる。我々のビール、ワインの飲み会は夜中までつづいた。

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アラスの岩山に朝日が昇る

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ピーター&レナタと伊藤さん

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アラスのキャンプ場をあとにする

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鉄道の橋の下にもぐりこんでの昼食

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ナミブ砂漠の一直線の道

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夕日を浴びたフィッシュリバーキャニオン

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フィッシュリバーキャニオンでの記念撮影