賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

アフリカ縦断2013-2014(その26)

「ナイロビ→ケープタウン編」(26)

 スワコップムントのキャンプ場「アルテブリュッケ」には連泊する。

 1月6日は夜明けとともに起き、大西洋の砂浜を歩いた。そのあと町中を歩き、24時間営業のガソリンスタンドでコカコーラを買って飲んだ。1本11ドル(約110円)で、前夜のビールよりも高い。ガソリンスタンドの並びにはトヨタの販売店ヤマハの販売店があった。

 キャンプ場に戻ると、マヨパンの朝食を食べ、世界最大のアザラシの生息地として知られているケープ・クロスに行く。この日はナイロビを出発してから19日目。ケープクロスまで行くのは希望者だけで、疲れている人はスワコップムントで休息をとってもらうという予定だったが、全員が元気満々で、全員がバイクでケープ・クロスに向かった。

 スワコップムントの町を出ると、大西洋岸のナミブ砂漠の道は塩で固めた高速ダートになる。アクセル全開で走ったが、舗装路以上に快適に走れる。世界にはこんな道もある。 北はアンゴラ国境から南は南アフリカ国境まで、大西洋岸沿いに1300キロもつづくナミブ砂漠は南北に細長い砂漠。東西の幅は狭いところだと50キロ、広いところでも150キロぐらいでしかない。

 スワコップムントから北に80キロほど走ると、大西洋岸のヘンテスベイの町に着く。 ヘンテスベイを過ぎた分岐を直進するとケープ・クロスだが、右折する道はチタン鉱山のあるウイスに通じている。ウイスまでは100キロほど。この町の近くに世界遺産にも登録されている「ホワイトレディー」などの岩壁画がある。「南部アフリカ一周」(1973年~1974年)ではナミビア北部もまわったが、その途中で「ホワイトレディー」などの岩壁画を見た。

 ブッシュマンの岩壁画(ロックペインティング)で知られるトゥワイフェルフォンテインには全部で3000もの岩壁画があるという。しかし岩壁画を探すのは容易なことではなかった。さんざん歩きまわり、やっとの思いでいくつかの岩壁画を見ることができた。多くは岩影にあった。キリンやサイ、カモシカ、ダチョウなどの野生動物が描かれていた。牛の絵もあった。あるものはすっかり風化し、またあるものは心ない人たちによって削り取られていたが、なかにはじつに色鮮やかなものもあった。

 それらの岩壁画のなかでも一番有名なのが、ナミビアの最高峰ブランドバーグ山(2573m)の山麓にある「ホワイトレディー」なのだ。

 駐車場から1時間ほど山道を歩いたところにあるが、岩に印された白い矢印をたどって行けばいいので、間違えることなくたどりつけた。あたり一帯には大岩がゴロゴロしていた。そのひとつ、屋根のように張り出した大岩の内側に「ホワイトレディー」はあった。 躍動感にあふれた岩壁画で、「ホワイトレディー」は右手に花を持ち、左手には弓矢を持っている。胸から下が白く描かれているので「ホワイトレディー」と呼ばれているが、どう見ても女性ではなく男性だ。

 ナミビア北部では世界最大の隕石も見た。それはアンゴラ国境に近いグルートフォンテインの町から30キロほどのホバ農場にあった。世界最大の「ホバ隕石」を見たときの第一印象は「なんだ、隕石といっっても、ただの岩と変わりがないではないか」というもの。それは直径3、4メートルの岩で、どの程度、地中にめりこんでいるのかは、見た目ではわからなかった。

 しかし表面の削りとられた部分を見てビックリした。

 ピカピカに光っている。

「この岩は金属の固まりなんだ」

 ということがわかった。

「ホバ隕石(メテオライト)」の推定重量は5万4422キログラム、成分の93パーセントが鉄で7パーセントがニッケル、その他、微量の銅、コバルト、クロームが含まれているという。

 この隕石は20世紀の初めにブリッツという人が発見したもので、すぐに世界に知れ渡るところとなった。ブリッツさんは後にホバ農場の農場主になったとのこと。この隕石がいつごろ落ちてきたものかはわかっていない。それにしても、50トン以上もの金属の塊が落ちたときは、すさまじいばかりの轟音だったことだろう。

 さて、ケープ・クロスだ。ヘンテスベイの町からさらに北に50キロほど走ると到着だ。無人の海岸地帯に15万頭以上ものアザラシの大群を見たときは我が目を疑った。ものすごい数。踏みつぶされて死んだアザラシの赤ちゃんを何頭も見る。ちょっといたましい光景だが、これが自然の摂理というもの。世界にはこんな驚異の場所もあるのだ。

 クロス・ポイントからヘンテスベイに戻ると、レストランでビッグバーガーの昼食を食べた。

 スワコップムントのキャンプ場「アルテブリュッケ」に戻ると町を歩き、鉄道の駅まで行った。1日1便、ウイントフック行きの列車が出ている。そして大西洋の砂浜を歩き、水平線に落ちる夕日を眺めた。

 町歩きを終えてキャンプ場に戻ると、夕食のスパゲティーを食べ、そのあと焚火にあたりながら5リッター入りのケープワイン(白)を飲んだ。飲み友は道祖神の吉岡さん。2人で5リッターのワインを空にした。ワインを飲みながら、吉岡さんの自転車での「アフリカ縦断」や「世界一周」の話を聞くのだった。

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夜明けのスワコップムント

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ナミブ砂漠で記念撮影

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大西洋の砂浜に立つ!

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ケープ・クロスのアザラシの大群

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昼食のビッグバーガー

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スワコップムント駅

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夕暮れの大西洋

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大西洋に沈む夕日