「青春18きっぷ2010」(32)
長万部では1時間ほど待ち時間があるので、駅の周辺を歩いた。前日の大雪はほとんど消えていた。
駅前から内浦湾(噴火湾)の海岸へ。海を渡る風は冷たい。
天気がよければ豊浦から洞爺、伊達、室蘭と今、室蘭本線で通ってきた海岸線が見えるのだが、水平線には灰色の雲が垂れ込め、まったく陸地は見えなかった。
北海道の地名の大半はアイヌ語に由来しているが、「オシャマンベ」はアイヌ語の「カレイのいる所」を意味するという。二股ラジウム温泉の奥にそびえる長万部岳(972m)の雪形がカレイに見えるという説もあるらしい。
長万部周辺の海では実際、カレイがよく獲れるとのことだが、その雪形が見える頃になると、本格的なカレイ漁が始まるのかもしれない。
16時08分発の函館本線の函館行に乗る。1両編成のディーゼルのワンマンカー。車内には数人の乗客が乗っていた。
列車は定刻通りに発車。ボックスシートに座り、車窓を流れていく風景を眺める。
中ノ沢を通り、国縫(くんぬい)を過ぎる頃には日が暮れた。悲しくなるほどで、北国の冬の夕暮れはトトトトッと音をたてるように早い。
八雲駅ではドッと乗ってくる。大半は高校生。座席はほぼ埋まった。次の山越駅でかなり降り、次の野田生でも降り、その次の落部駅を過ぎるとガラガラの車内になった。
落部からは乗客は自分一人になった。
その後も乗る人はなく、カソリ1人を乗せて17時25分、森に到着。
ガラガラの列車を走らせなくてはならないJR北海道には、深く同情してしまった。
この列車は森駅に30分以上停車したあと、大沼までは、砂原、鹿部経由の海側ルートを行く。
時刻表を見ると、次の列車、長万部発18時05分の列車に目がいった。この列車だと、山側ルートで大沼まで行く。
昨日の「函館→長万部」では海側ルートを通ったので、今日の「長万部→函館」では山側ルートを行くことにした。
急きょ森駅で下車。
山側ルートの函館行は森発19時40分なので、2時間以上ある。
「よーし、森を歩くぞ!」
長万部はアイヌ語の「オシャマンベ」(カレイのいる所)の意味だといったが、森はアイヌ語の「オニイシ」(樹木の茂っているところ)に由来するという。それを「鬼石」にするのではなく、「林」でもなく、「森」にしたところに先人の智恵を見る。
北海道の地名の大半はアイヌ語の音に漢字を当てはめたもの。ところがこの「森」のように、意訳して漢字を当てはめた例もある。
森駅の近くに国道5号の道の駅「YOU・遊・もり」があるが、その道の駅にある公園は「オニイシ公園」だ。そのことからもわかるように、森の地名の由来となった「オニイシ」は、森のみなさんにはよく知られている。
森駅を降りると、駅前の「柴田商店」に行き、名物駅弁の「いかめし」(500円)を食らう。煮付けたイカの中に入ったご飯のモチモチ感が「いかめし」の人気の秘密。
「イカ飯」は北海道のイカ料理の代表的なもの。足を引き抜き、よく洗って包丁目を入れた身に、洗った米を詰める。つま楊枝で口をふさぎ、醤油、味醂で味つけしただし汁の中で1時間ほど煮込み、出来上がり。このイカの中に詰める米がイカめしの味の決め手だそうで、糯米と粳米を混ぜる割合がつくり手の秘伝になっている。
長万部では前日の雪はほとんど消えていたが、森にはまだかなり残っていた。日が落ちると急速に気温が下がり、歩道も車道も、路面はアイスバーン状態になっている。ツルツル滑りながら歩き、国道5号の道の駅「YOU・遊・もり」へ。
道の駅内の「オニイシ公園」を歩く。その一角には「オニイシ遺跡」がある。
「オニイシ公園」の展望台から夜の森の町並みと暗い内浦湾を眺め、森駅に戻った。
長万部駅から函館方面を望む。停車中の列車は折り返しの東室蘭行
長万部駅の改札口
函館行に乗車
函館行列車の運転席
長万部を出発
落部駅を過ぎるとガラガラ
森に到着
森駅
森駅前の「柴田商店」
森駅の名物駅弁「いかめし」
森駅前
森町の駅前通り