「青春18きっぷ2010」(28)
第4日目(旭川→函館・その2)
岩見沢駅の函館本線のホームに降り立つと、「ばんばの像」が目に飛び込んでくる。北海道遺産にもなっている「ばんえい競馬」の像だ。
北海道遺産の「北海道の馬文化」には(ばん馬、日高のサラブレッドなど)と、括弧書きされているが、「ばん馬」は馬車や橇(そり)を引かせる馬のこと。世界でも唯一、北海道だけで開催されている「ばんえい競馬」は、ばん馬の競走だ。
もうずいぶんと前のことになるが、北見競馬場で「ばんえい競馬」を見たことがある。各馬がいっせいにスタートすると、場内は割れんばかりの声援で、ものすごい熱気に包まれた。
サラブレッドとはまったく違うガッチリした体格のばん馬に、重い橇を引かせて競争する「ばんえい競馬」。騎手は橇の上に乗り、鞭を振い、登り下りのある200メートルほどの距離を走る。あまりの迫力に圧倒されたが、それは北海道の開拓時代を彷彿とさせるものだった。
以前は北見のほかに岩見沢、旭川、帯広の4ヵ所で開催されていた。岩見沢駅に「ばんばの像」があるのはそのため。だが、残念ながら今では帯広で開催されているだけだ。
岩見沢駅では改札口を出て、駅前を歩いた。近代的な駅舎に戻ると、駅舎内で焼きたてのパンを食べた。
岩見沢からは室蘭本線に乗る。といっても「岩見沢―苫小牧」間は本線とは名ばかりの超ローカル線で電化されていない。便数も2時間から3時間に1本程度で極少だ。
9時08分発の苫小牧行の乗った。1両編成のワンマンカー。車内はガラガラのままで発車した。
ボックスシートに座り、流れていく風景を眺める。雪はまったく見られない。旭川を出発したときのボソボソ降りつづける雪がまるで幻のように思えた。
栗山を通り、9時55分、追分に到着。ここで新夕張から夕張方面、新得、帯広方面に行く石勝線と交差する。
普通「追分」といえば、信州の中山道と北国街道の追分のように街道の分岐点をいうが、この北海道の追分は鉄道の分岐点にちなんだもの。
かつては室蘭本線はもっともっと重要だったし、夕張炭鉱からの石炭を積んだ夕張線(今は石勝線の一部)の貨物列車は頻繁にこの駅を通った。駅構内の広々とした敷地は、かつての追分駅の繁栄を今に伝えているし、鉄道がきわめて重要だった時代、追分は鉄道の町だった。
JR線にはもうひとつ、「追分駅」がある。奥羽本線の追分駅で、ここでは男鹿線が分岐している。だが、この追分は鉄道の分岐というよりも、羽州街道と男鹿半島に通じる船川街道の分岐にちなんだ追分だと思われる。
「追分」というのは、何とも心ひかれる旅のテーマだ。
追分駅を出ると、室蘭本線の1両編成の列車は平原をひた走る。沼ノ端駅で特急列車が何本も走る千歳線に合流し、10時37分、終点の苫小牧駅に到着した。
岩見沢駅の「ばんばの像」
岩見沢の駅前を見下ろす
朝の岩見沢駅前
岩見沢駅構内のパン店で朝食
苫小牧行列車の運転席
車窓の風景。雪はまったくない
由仁駅
追分駅
苫小牧に到着