賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「青春18きっぷ2010」(23)

第3日目(函館→旭川・その8)

 手宮の「小樽市総合博物館」の見学を終えると、カブタン旦那の車で小樽市内を走り、「庄坊番屋」という店へ。ここでカブタン夫妻と急きょ、忘年会をすることになった。

 カブタン旦那には申し訳ないがウーロン茶で我慢してもらい、カブタン&カソリは生ビールで「乾杯!」を繰り返す。

 この店ではカブタンが小樽ならではのもの、北海道ならではのものを頼んでくれた。

「カソリさん、タチは食べたことある?」

「ありますよ。でも関東ではあんまり食べないんですよね。関西人は好きだけど。韓国の釜山の食堂でも食べましたよ」

「違うよ、それって」

「え、あの細長い、平べったい魚のタチでしょ?」

「カソリさん、それはタチウオでしょ」

「じゃ、食べてみようね」

 ということで真っ先に「タチ」を頼んでくれた。タチをポン酢で食べる「タチポン」だ。これが北海道の秋から冬にかけての一番の味覚だという。

 タチはマダラの白子。プリプリしたタチは真っ白な色をしている。鍋に入れれば「タチ鍋」になるし、天ぷらにもするし、味噌汁にも入れるという。タチの入った蒲鉾の「タチカマ」もあるという。北海道人はタチが大好きなのだ。

 そんなタチを頼んでくれたカブタンの心づかいに感謝、感謝。

 次は「八角」だ。

 八角はトクビレというそうだが、顔の形が八角をしているので「八角」といっている。ちょっと骨ばった魚だが、その焼き魚は味がいい。八角は以前にも食べたことがあるが、やはり北海道で。北海道以外で食べたことはない(多分)。

 次は「ニシン」だ。

 焼き魚を食べたのだが、ニシンを食べながら、カブタンとは「北海道遺産」の話で盛上がった。というのは北海道の日本海側はニシン漁で空前の繁栄を謳歌し、その名残が北海道遺産に指定されている。我が北海道遺産の師、カブタン先生のニシン漁の話を興味深く聞かせてもらった。これがまたいいんだな。

 最後は小樽ならではの「すしの盛合わせ」。小樽はいまや「すしの町」。小樽寿司屋通りがあるほどで、すしを食べにわざわざ小樽までやって来る人も多いという。

 こうして北海の味覚を存分に味わったところで小樽駅まで送ってもらった。

 ぼくはこの先、札幌まで行き、札幌発19時38分の列車で滝川へ、そこで乗り換えて旭川に向かっていくことになっている。カブタンもいつもの特急ではなく、鈍行につき合ってくれるという。

「よーし、今度は車内宴会だ!」

 小樽の駅前でカブタン夫妻と別れたが、カブタンとは札幌駅での待ち合わせだ。

 カブタン夫妻に初めて会ったのは「300日3000湯」の「温泉めぐり日本一周」のとき。2007年9月1日、60歳の誕生日、その日に青森から函館に渡り、反時計回りでの「北海道一周」を開始した。

 函館本線でも通った鹿部温泉でお2人に会ったのだ。

 カブタン夫妻は「(ここでなら)きっとカソリさんを捕まえられるだろう」と札幌から車を飛ばして来てくれた。カブタン夫妻には何と「カソリさん 祝60才♪」のバースデーケーキをいただいた。北海道人なら誰でも知っている「わかさいも本舗」のケーキで、上にのったチョコレートに「カソリさん 祝60才♪」が描かれていた。60歳分のローソクを吹き消したあと、お2人と一緒に食べたバースデーケーキは超美味。それよりもなによりもバースデーケーキをプレゼントしてもらったことなどほとんどないカソリ、もう大感激だ。

 それともうひとつ、大きなバースデーケーキ効果があった。

 60の誕生日を迎え、

「なんで自分がもう還暦なの…」

 とかなり落ち込んでいた。

 だがお2人に会い、一緒に海岸でバースデーケーキを食べたことによって、落ち込んだ気分は一気に吹っ飛んだ。

 気分はすっかり前向きになった。

「還暦っていったら、年が元に戻ることではないか。自分が戻るのはアフリカに旅立った20歳の、あのときしかない。自分は20歳に戻ったんだ」

 自分勝手な還暦の解釈をしたとたんに気分は明るくなった。

 その「300日3000湯」の「北海道一周」では積丹半島の盃温泉の国民宿舎「もいわ荘」でも一緒に泊った。夕食では何本ものビールを空けた。食堂での夕食を終えると、今度はカブタン夫妻の部屋に舞台を移しての飲み会になった。

 そこでは、お2人が車に積み込んで持ってきた北海道の地酒をいただいた。

 何種もの地酒。1升びんをあけ、5合びんをあけ…で、まずはカブタン旦那がダウン。そんなカブタン旦那を尻目に平然と飲みつづけるカブタン。強い。ほんとうに強い!

 カブタンとの飲み比べを口ばしってしまったカソリ、途中で「しまった!」と思ったときはもうすでに時遅し。足腰がたたないくらいに酔ってしまった。

 翌日の二日酔いの辛さといったらなかった…。

 2008年の「60代日本一周」のときには、お2人は苫小牧まで来てくれた。雪がちらつくなか、一緒にの鵡川まで走り、道の駅「むかわ四季の館」で別れた。

 2009年の北海道遺産めぐりの「北海道一周」では、石狩・北見国境の石北峠で出会った。お2人と一緒に峠の店で食べた「石北ラーメン」の味は忘れられない。石北峠から旭川までは一緒に走った。

 2010年の「林道日本一周」では旭川の旭橋で再会を果たした。

 小樽駅でカブタン夫妻と別れたあとは、そんなお2人との思い出がまるで走馬灯のようにクルクルまわってまぶたに浮かんでくるのだった。

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カブタン旦那の車で小樽市内を走る

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カブタン夫妻との忘年会の会場に到着

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これがタチポン

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八角

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ニシン

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小樽のすしだ!