賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(57)周防大島(山口)

(『ジパングツーリング』2002年3月号 所収)

 広島から国道2号で大竹を通って山口県に入る。

 岩国の駅前食堂でラーメンライスの夕食を食べ、ナイトランの開始。海沿いの国道188号を行く。

 大畠で国道437号の大島大橋を渡り、瀬戸内海では淡路島、小豆島に次いで大きい周防大島に入っていく。

 屋代島ともいわれる周防大島だが、この島は、伊豆大島、奄美大島と並ぶ“日本三大・大島”のひとつになっている。

 大島大橋を渡りきったところでパトカーが検問していた。な、なんとそれに捕まった。テールランプがついていないというのだ。

「うそでしょ!」

 と、警官にくってかかるカソリ。

 というのは岩国を出発するとき、ちゃんと確認していたからだ。

 50㏄バイクの夜間走行でテールタンプがついていないということは、命とりになってしまう。ということで、ナイトランになるときは、必ずテールランプを確認していた。

 ところがほんとうについていない。

 よりによってこんなところでバルブ切れ‥。

 整備不良ということで切符をきられた。

 クソーッ。

 ところが信じられないことに、周防大島の久賀に着くころにはまたちゃんとついていた。罰金5000円、取られ損だー!

 久賀では久賀港近くの「ひふみ旅館」に泊まった。

 翌朝は冷え込んだ。

 朝、道行く人が「寒うなったねえ」と挨拶をかわしている。

 テレビの天気予報では北国の各地で気温が0度を割ったと報じている。ところが周防大島では寒くなったといっても、朝起きたときは半ソデ1枚でいあられるくらい。あらためて瀬戸内海の温暖な気候を感じた。

 久賀の「ひふみ旅館」で朝食を食べ、国道437号で東和町へ。

 そこが我が師、民俗学者の宮本常一先生の故郷なのだ。生涯を通して4000日以上も日本国内を旅された宮本先生は亡くなられてすでに久しいが、奥様はお元気だ。先生のご子息の宮本光さん夫妻が先生の故郷をしっかりとまもっている。

 宮本光さんはミカン、サツマイモが中心の「宮本農園」の農園主。我が家で食べるミカンやサツマイモの大半は、ここ、宮本農園産のものなのだ。

 宮本常一先生の故郷を訪ねるのは、ぼくの「日本一周」の聖地巡礼のようなもの。先生の奥様、宮本光さん夫妻に挨拶し、先生のお墓のある神宮寺のお参りをし、今回の「日本一周」の聖地巡礼とした。

 国道437号が途切れる伊保田へ。

 ここから松山へ、フェリーが出ている。国道437号の起点は松山なのである。

 伊保田から周防大島の南側にまわり込む。道幅がぐっと狭くなる。短いトンネルを抜けたところが由宇。小さな港。右手に片島、正面には愛媛県の二神島が見える。その向こうには四国の山々がはっきりと見えている。

 海沿いの県道60号を行く。

 プッツンと途切れた先ではミカン園の中を縫う狭い道を走り抜け、きれいなビーチがつづく片添浜に出た。ここでは片添浜温泉「遊湯ランド」(500円)の湯に入った。

 さらに海沿いの道を行く。周防大島は久賀町、東和町、橘町、大島町の4町から成っているが、そのうち橘町では竜崎温泉「潮風の湯」(700円)に入った。

 橘町から大島町に入り、大島大橋に戻った。135キロの「周防大島一周」。さすが「日本三大・大島」の周防大島だけあって、島一周の距離は100キロを超えた。

 最後に「日本三大文殊」の文殊堂に参拝し、飯の山展望台から大島大橋を見下ろし、周防大島温泉「大観荘」(1000円)の露天風呂に入った。