賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(49)因島&生口島(広島)

(『ジパングツーリング』2002年3月号 所収)

 尾道は瀬戸内海の島巡りの拠点には最適のところだ。

「しまなみ海道」の開通以前の尾道の駅前桟橋はすごかった。ここからは対岸の向島や因島、生口島、大三島、伯方島、大島といった芸予諸島の島々のみならず、四国本土の今治や松山に行く連絡船がまるで大きなバスターミナルからバスが発着するように、ひんぱんに出入りしていた。

 駅前桟橋の待合室といったら、JR尾道駅のそれよりも、はるかに大きなものだった。 待合室に座っていると、いろいろな島の話しが聞こえてきた。

 壁に貼られた航路図を見ると尾道と今治の間は芸予諸島の島々によってびっしりと埋め尽くされ、その間を航路を示す色とりどりの線が複雑にからみあって引かれていた。

 瀬戸内海の島への夢を猛烈にかきたてられる尾道だった。

「さー、行くゾ!」

 と、スズキSMX50にひと声かけて、そんな尾道駅前を出発。

 芸予諸島の島巡りの開始だ。

 尾道大橋(50円)で向島に渡り、しまなみ海道の因島大橋(50円)で因島に渡る。自動車専用のレーンの下段に歩行者、自転車、原付専用のレーンがあるのだが、料金は出口の料金箱に入れるようになっている。

 因島の国民宿舎「いんのしまロッジ」でひと晩、泊まった。夕食がよかった。タイとハマチの刺し身、サワラのたたき、カニ&タコの鍋、それに揚げたてのエビとカキのフライが出た。

 翌朝、因島から生口島に渡る。

 しまなみ海道の生口橋でも渡れるが、フェリーの方がおもしろいので、金山港から三光汽船のフェリー「第三いんのしま」に乗った。1日38便、ほぼ20分おきに出ている。料金もバイクともで125円と安い。所要時間は5分だ。

 生口島の赤崎港に上陸。“島国道”の国道317号を南下。芸予諸島の生名島、磐城島、伯方島と愛媛県側の島々を見ながら走る。島の南端までいくと、しまなみ海道の多々羅大橋でつながった大三島が見えてくる。大三島も愛媛県の島。これら愛媛県側の島々は「四国編」のときにまわる予定だ。

 島の西側にまわり込み“西の日光”ともいわれる耕三寺を参拝。朱塗りの五重塔、日光の陽明門風の孝養門、堂々とした本堂と見てまわったが、入場料の1000円は高い。

「生口島一周」を終え、フェリーで因島に戻った。

 金山港に戻ると、そこから時計回りで因島を一周。

 さきほどの“島国道”の国道317号を行く。しまなみ海道の生口橋の下をくぐり抜け、国道と別れ、海沿いの県道366号を行く。佐木島、小細島、細島と見ながら走り、島の北端で国道317号と合流。この地点がかつてのフェリー乗り場。今はしまなみ海道の因島大橋がそれにとってかわっている。

 その因島大橋の下をくぐり抜ける。本土側を走っているときは、橋というのはたいして気にならないが、本土と島を結ぶ橋、島と島を結ぶ橋というのはものすごく意識するし、心にも残る。

 因島を横断する国道317号と再度、別れ、海沿いの県道366号を南下。

「村上水軍」にちなんで「因島水軍ライン」と名づけられた県道366号からは百島、田島、横島がよく見える。

 さらに南下し、因島の南端までくると、狭い水道をはさんで弓削島、佐島、生名島、岩城島などの島々を見る。これらはすべて愛媛県の島。まさに芸予諸島どおりの光景で、広島県の安芸と愛媛県の伊予の国境にまたがるこの一帯は島また島、多島海の風景なのである。

「因島一周」の出発点、金山港に戻ると、今度は島の中央部を北上。島とは思えない長いトンネルの大山トンネル(704m)を走り抜け、中庄へ。そこに「因島水軍城」(310円)がある。

 因島といえば瀬戸内海を牛耳った「村上水軍」の島。そこには村上家に伝わる鎧・兜や古文書などが展示されている。「村上水軍」の主力艦だった大阿武船の精巧な模型が目についた。

 因島からは因島大橋で向島に渡り、向島からは尾道大橋で尾道に戻った。

 尾道では国道2号のすぐわきが乗り場になっている「千光寺山ロープウエイ」(往復440円)で千光山の山頂展望台まで行く。

 そこからの眺めは絶景!

 尾道の市街地と対岸の向島の間は大河を思わせるような尾道水道。瀬戸内海に浮かぶ島々はまるで山脈の山々が連なっているかのように見えた。