賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(35)弁天島(静岡)

(『ジパングツーリング』2002年1月号 所収)

 2001年9月11日午前9時30分、台風15号は江ノ島を直撃し、鎌倉に上陸した。台風が通り過ぎるのを伊勢原の我が家でじっと待ち、昼食も家で食べる。雨が上がり、風も大分おさまり、青空が見えはじめた午後2時、出発!

 大磯から国道1号で小田原に向かう。海沿いの西湘バイパスは台風の余波で通行止。そのため国道1号は激しい渋滞だ。車の長い列はほとんど動かない。すり抜けの連続で、やっと小田原着。

 小田原からは国道135号を行く。熱海到着は17時30分。すぐに熱海港に行ったが、熱海の沖に浮かぶ初島への船の最終便は出たあとだった。

 17時20分発の最終便に飛び乗り、初島に渡ったらどこか民宿に飛び込みで泊まろうと思っていたのだが、急遽予定を変更。伊豆半島に入り、南端の石廊崎まで行くことにした。

 国道135号を南下しながら明かりのともりはじめた初島をみながら走る。

 宇佐美の「ふしみ食堂」で「ひもの定食」(800円)を食べ、伊東、下田と通り、石廊崎は20時50分。岬近くの民宿「エキゾチックガーデン」に泊まった。なつかしの民宿。1999年の「日本一周」の第1夜目に泊まった民宿なのだ。

 夜明けの風景がすごかった!

 部屋の窓を開けると、目の前には蓑掛島が見える。その左側後方には神子元島。灯台の明かりがまだついている。蓑掛島の2つの岩山の間には新島、その右側には式根島、神津島が見えた。

「エキゾチックガーデン」では、ショッキングな朝を迎えた。何気なく部屋のテレビのスイッチを入れると、アメリカの同時多発テロの映像が飛び込んできた。7時半の朝食後も、テレビにかじりついた。

 ハイジャックされた2機の旅客機がニューヨークの貿易センタービルに激突するシーン、その後のビルが倒壊するシーン、別の旅客機がワシントンの国防総省に突っ込んだシーンを見つづけた。信じられない光景。これをもって世界は大きく変わってしまう‥と直感した。

 石廊崎からは西伊豆の海岸線を北上。台風一過の抜けるような青空でスズキSMX50で切る風が最高に気持ちいい。

 西伊豆の旅人岬、御浜岬、大瀬崎と3岬に立ち寄り、沼津に出た。

 沼津から国道1号で静岡へ。静岡からは夜の国道150号で静岡県の最南端、御前崎まで行き、岬近くの高台上にある民宿「さざなみ」で泊まった。

 翌朝は朝食後、朝日を浴びた御前崎を歩き、灯台から太平洋を見下ろした。目の前の海の岩場には磯釣りをする人たち。御前崎から国道150号で浜松へ。

 浜松ではSMX50の故郷、スズキの本社を表敬訪問した。

 浜松からは国道1号で浜名湖の弁天島を通る。

 あっというまに通り過ぎてしまう小さな弁天島は、じつはすごい島なのだ。

 国道1号のみならず、JR東海道線や新幹線も通っている。東海道線の弁天島駅もある。駅前には弁天島温泉の高層ホテルが建ちならんでいる。

 日本広しといえども、ほかにはこんな島はない!