賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第40回 佐田岬(さだみさき・愛媛)

(共同通信配信 1990年)

 佐田岬は四国最西端の岬だ。

 八幡浜から佐田岬半島を行く。国道197号で向かったのだが、この半島は日本で一番細長く、付け根から岬までは50キロ以上もある。

 国道197号はかつて、ゴロあわせで「イクナ酷道」といわれほどで、海沿いの曲がりくねった狭い道だった。それが今では半島の尾根筋を走るハイウエーに変身。右手に瀬戸内海、左手に宇和海と、同時に2つの海を見ながら快適に走れる。四国側の終点、三崎港からは九州へ、大分へと海上の道が続いている。

 亜熱帯樹アコウの日本最北の群落のある三崎からは、カーブが連続する狭い道がつづく。岬先端の駐車場にスズキ・ハスラーTS50を停め、ヤブツバキなど照葉樹がおい茂る山道を歩き、岬先端の灯台へ。

 夕暮れの佐田岬から豊予海峡対岸の九州を眺める。高島がはっきりと見えている。その向こうの佐賀関半島は青く霞んでいる。やがて九州側・関崎の灯台に灯が入り、四国側・佐田岬の灯台にも灯が入った。

 暮れなずむ岬周辺の風景を眺める。点々と岩礁がある。数百メートル先の小さな標識灯が点滅しているあたりが黄金バヤだ。ここは瀬戸内海有数の難所だが、岩礁の周りは魚たちの格好のすみか。タイやサワラなど高級魚の一本釣りの好漁場になっている。

 またこのあたりは海士(あま)漁の本場。男たちが海に潜り、アワビやサザエ、テングサを採っている。海に潜るのは男の仕事と決まっていて、戦前は遥か遠く済州島や朝鮮半島南岸の海まで出稼ぎ漁に出ていた。漁民たちにとっては、すべてがひと続きの海なのである。

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佐田岬の突端から九州を眺める