賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(21)弁天島(青森)

 (『ジパングツーリング』2001年10月号 所収)

 

「本州東部編」は太平洋経由の「東京→青森」と、日本海経由の「青森→東京」の2パートに分けて走った。前回までが前半戦の「東京→青森」で、今回からが後半戦の「青森→東京」ということになる。

 青森では青森駅に近い「ビジネスホテルヤスダ」に泊まった。7時半朝食。ぼくのほかにはネクタイをしたサラリーマン然とした中高年の人たちが3人いた。みなさん、疲れたような顔をしている。そのうちの1人の人は、「最近の若いヤツラは出張を嫌うので‥」と嘆いていた。

 元気をなくした今の日本を象徴しているかのような青森のビジネスホテルでの光景。そのうち日本はジジイとババアだけの国になってしまう。いや、もうすでになりかかっている。みなさん、宿のおばちゃんのつくってくれた朝食をほとんど残している。朝からパクパク食べているのはぼくだけだ。この「ビジネスホテルヤスダ」、なんと1泊2食で5000円。安い。

 5月19日午前8時、青森駅前に立つ。目指せ、東京・日本橋。キック一発、スズキSMX50のエンジンをかけ、走りだす。SMX50は今日もエンジン快調。軽快な2ストサウンドを響かせる。

 青森からは国道280号で津軽半島に入っていく。

 高野崎、龍飛崎、権現崎と岬めぐりをし、浜名温泉、龍飛崎温泉、竜泊温泉と温泉めぐりをし、小泊に近い一軒宿の雄之湯温泉に泊まった。

 大浴場の湯につかりながら、津軽半島の海岸線と岩木山を眺める。ここは“絶景湯”。

 翌日は小泊から日本海に沿って南へ。十三湖と岩木川の河口を見、快適に走れる広域農道の「米米ロード」で鰺ヶ沢に向かう。津軽のいシンボル、岩木山がどんどん大きくなってくる。

 国道101号に合流し、鰺ヶ沢に着くと、国道沿いの「葛西商店」で名物の焼きイカを食べた。炭火で生干しのイカを焼いてくれる店のおばちゃんは、前に来たときと変わらずに元気そうだった。鰺ヶ沢の焼きイカはうまいのだ。

 鰺ヶ沢から国道101号を南下。その途中では風合瀬(かそうせ)漁港の前にある弁天島と深浦の町を一望する大岩の2つの島に渡った。ともに歩いて渡れる島だ。そして夕日が日本海の水平線に落ちかかるころ、不老不死温泉(入浴料300円)の露天風呂に入った。間に合った! 

 湯につかりながら、海に落ちていく夕日を眺める気分は最高だ。

 青森県から秋田県に入る。

 八森いさりび温泉「ハタハタ館」(入浴料400円)の湯に入り、八森漁港のすみで野宿した。