賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第36回 久成崎(くなりざき・沖縄)

 (共同通信配信 1990年)

 石垣島の石垣港は八重山諸島の玄関口。そんな石垣港から沖縄最南端の波照間島に渡った。波照間島は有人島としては日本最南端の島になる。

 高速船「第8あんえい丸」で石垣港を出ると、あっというまに竹富島のわきを通り過ぎ、新城島を左手に見て西表島の大原港に入港した。ここまで30分。

 すぐに出港し、うねりの大きな外海に突っ込んでいく。うねりの山から谷に落ちるときは、たたきつけられるような衝撃を感じる。大原港から30分後に着いた波照間島は南海の孤島だった。

 島に上陸すると、すぐさま50㏄バイクで走り始める。

 隆起サンゴ礁の波照間島は島全体が平で、一面のサトウキビ畑になっている。石灰岩を砕いて、大規模なサトウキビ畑も造成中。

 八重山諸島のなかで石垣島に次いで耕地面積の広い波照間島は、一周すれば10キロほどの小島。だが250戸の戸数があり、750人ほどの人たちが住んでいる。

 外周道路を折れ、ダートを走ると、日本最南端の久成崎に出る。観光客でにぎわう日本最北端の宗谷岬と比べると、あまりにも寂しい。岬にはまったく人影はなく、サンゴ礁の海岸にはポツンと「日本最南之碑」が立っていた。

 それと「波照間の碑」があって、それには北回帰線まで65キロ530メートルと書かれてあった。

 その夜は島の民宿に泊まった。気温は30度を下がらず、汗をタラタラ流しながら寝苦しい熱帯夜を過ごした。10月中旬のことだった。

 その夜、日本最北端の宗谷岬では氷点下になった。同じ日の同じ時間、北と南では気温が30度以上も違った。日本は広い!