賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(4)

 (『ジパングツーリング』2001年7月号 所収)

 

伊豆大島

 ぼくは1999年の4月から11月にかけて、スズキDJEBEL250GPSを走らせ、全行程が4万キロの「日本一周」をなしとげた(そのときのことは昭文社刊の『日本一周バイク旅4万キロ・上下巻』に詳しく書いてますので、みなさんお読み下さい!)。 そのときの「日本一周」は日本本土の海沿いのルートをメインにし、何本ものミニ一周ルートで内陸に入っていくという周り方をした。いわば、「本土編」の「日本一周」だ。

 それに対して今回、「島編」の「日本一周」を計画した。やはり日本本土の海沿いのルートをメインにするが、今回はそのメインコースから外側へ、外側へとループをつないでいくやり方。「島めぐり」の「日本一周」で、バイクを積めるフェリーや船で次々と日本の島々をまわろうという計画だ。

 それを実現させる日がやってきた!

 2001年3月22日午前6時、ぼくは東京・日本橋に「島編・日本一周」の50㏄バイク、スズキSMX50とともに立った。日本橋には何人もの人たちが見送りに来てくれた。まず最初は「伊豆諸島編」。1日かけて東京の下町をまわり、22時、東京港竹芝桟橋出港の東海汽船「さるびあ丸」に乗った。

 翌3月23日午前6時、東海汽船の「さるびあ丸」(4965トン)は、伊豆大島の岡田港に着いた。東京から8時間の船旅だ。伊豆諸島最大の伊豆大島には、この北岸の岡田港と西岸の元町港、南岸の波浮港があるが、「さるびあ丸」が接岸するのは岡田港と元町港の2港のみ。その日の風の具合などによって岡田港に着いたり、元町港に着いたりする。

「島編・日本一周」のバイク、スズキSMX50の入ったコンテナが船から降ろされる。50㏄バイクだとチッキ(受託手荷物)で運んでもらえる。伊豆諸島をバイクでめぐるのなら50㏄は断然便利だ。「東京→伊豆大島」の2等運賃は3810円、50㏄バイクは2070円だった。

 岡田港の桟橋で「さー、行くゾ!」のガッツポーズのあと、さっそく伊豆大島を走りはじめる。反時計まわりに島を一周する。伊豆諸島最大の島といっても、一周は50キロほどだ。

 岡田から元町に向かっていく途中で温泉宿を発見! 平成の湯温泉「くるみや旅館」。ちょうど朝食の時間なので、入浴させてもらえるかな‥‥と、ダメもとで頼んでみた。すると、ありがたいことに入浴させてもらえた。入浴料500円。記念すべき「島編・日本一周」の第1湯目だ。

 ぼくは今までに日本の温泉1600湯あまりに入っている。目標は日本の全湯制覇。そんな「温泉のカソリ」なのに、ドジをやって、タオルを忘れてしまった。で、タオルを買おうとしたら、なんと宿の主人は「どうぞ使って下さい」といってタダで出してくれた。島の人のやさしさにふれカソリ、感激。

 伊豆大島最大の町、元町に着いたところで給油しようとした。ところがタンクのキャップのロックがあかない。あー、しまった! またしてもドジをやってしまった。

 スズキSMX50はスペインスズキの製造で逆輸入車。メインスイッチのキーとタンクキャップのキーは別だった。それに気がつかずに、タンクキャップのキーを家に置いてきてしまった‥。

 ドライバーでキャップをこじあけようとしたが、うまくいかない。すぐ近くに自動車の修理工場があった。修理工場の主人に頼むと、鮮やかな手つきでキャップをこじあけてくれた。修理代を払おうとすると、「いいんだよ」といって受け取らない。お礼に自販機のカンコーヒーを何本か渡したが、ぼくはまたしても島の人のやさしさにふれた。

 元町港の前にある喫茶店「モア」でコーヒー&トーストの朝食を食べ出発。

 伊豆大島の西海岸を南下し、波浮港へ。しっとりとした情緒の残る港町。

「磯の鵜の鳥りゃ 日暮れにゃ帰る

 波浮の港は 夕焼け小焼け‥‥」

 と、港の先端には野口雨情の「波浮の港」の歌碑が建っている。それを見ていると歌を自然に口ずさんでしまう。

 波浮から伊豆大島の東海岸を走り、泉津の大島公園へ。ここの「椿資料館」(入館無料)には、100種以上もの椿の切り花が展示されていた。「椿園」には5000本以上もの椿が植えられ、椿の木の下は落ちた椿の花で赤い絨毯のような華やかさ。泉津の集落内を走る「大島一周道路」沿いは椿並木だ。

「椿のトンネル」をくぐり抜けていく。ここでは樹齢200年以上の古木も見られる。こうして岡田港に戻った。

 再度、元町へ。「火山博物館」を見学し、SMX50のエンジンをうならせ、御神火スカイラインで三原山の山頂口まで登る。外輪山上の展望台に立ち、伊豆大島のシンボル三原山を一望。そこから山頂まで歩いた。50分ほど。残念ながらガスがかかり、火口は見えなかった。

 元町に下ると、「浜の湯」(入浴料400円)、「御神火温泉」(入浴料1000円)と温泉2湯に入り、最北端の乳が崎経由の道で岡田に戻り、民宿「とみや」に泊まった。