韓国食べ歩き:第7回
(『あるくみるきく』1987年1月号 所収)
続・南大門市場を歩く
南大門市場を歩いていて、とくに私の目をひきつけたのは塩辛売場だった。
塩辛のことをチョッカルといっているが、イカ、ホタルイカ、アミ、エビ、カニ、ヒシコイワシ、スケトウダラの子やはらわた、カキやアサリなどの貝類と、とにかく種類が多い。それら多種類の塩辛がプラスチック製の大桶いっぱいに詰め込まれている。韓国人がいかによく塩辛を食べているか、またよく使っているかを物語るような光景だ。
明太子も売っている。さすが本場の明太子だけあって、色艶がいい。思わずひときれ取って、あたたかいご飯の上にのせて食べたくなった。なお、ミョンテー(明太)といえばスケトウダラのことである。
海草売場ではノリが目立って多い。そのほか、ワカメ、アオサ、モズクなどが見られたが、なぜかコンブは目に入らなかった。韓国ではコンブは食べないのだろうか…。
肉売場では、肉が大きな塊のままで売られている。臓物はむきだしのままで、ギョッとするほど生々しい。
丸ゆでにしたウシやブタの頭が並んでいる。それらは祭りや厄払いの行事に主として使われるとのことで、供物として供えられる。もともとはソモリ(丸ゆでしたウシの頭)が使われていたものが、近年ではテージモリ(丸ゆでにしたブタの頭)も使われるようになっているという。
青果類の売場でも、魚介類の売場でも、肉の売場でも、市場内での売り方は迫力満点。ちまちまと小分けにして売っているのではなく、ドサーッと、山のように積み上げられている。その量のすごさに圧倒されてしまう。
こうして南大門市場を歩いていると、韓国人の食生活の一端を垣間見ることができるし、韓国の食文化を考えられるし、韓国人の生き方にも迫れる。市場歩きはじつにおもしろい!